COLUMN コラム
レストラン経営の壁とは?必要な資格と届出や押さえておきたい実践ポイント
「いつかは自分のレストランを持ちたい」そんな夢を抱く方は少なくありません。レストランを経営するにあたっては「料理の腕」や「おもてなしの心」だけではなく、大きな壁があります。実際に他業種と比べても難易度が高く、廃業率も高い業界といわれています。
一方で、適切な知識と準備を持って臨めば、成功への道筋を描くことは可能です。
この記事では、レストラン経営の壁となる課題から必要な資格や届出、さらに経営を成功に導くための実践ポイントまで、幅広く解説します。見落としがちなゴミ処理の重要性についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

レストラン経営の難しさとは?
レストラン経営は、多くの人が憧れる一方で、現実には厳しい側面が数多く存在します。ここでは、なぜレストラン経営が難しいといわれるのか、その背景を整理してみましょう。
店舗開設にかかる高い初期費用
レストランを開業するにあたって、最初に大きなハードルとなるのが「初期費用の高さ」です。日本政策金融公庫「2023年新規開業実態調査」によると、開業費の平均値は1,027万円となっています。この金額はほかの業種と比較しても高い水準にあります。
費用の内訳を見てみると、物件取得費用や店舗設備費用、さらには内外装の工事費が大きな割合を占めています。厨房機器や空調、客席のレイアウトに必要な家具などは想像以上に高額で、加えて内装デザインや外観の工事にはまとまった資金が求められます。
こうした費用は、飲食店のコンセプトや規模によってさらに増加する傾向があります。
また、立地にこだわればこだわるほど費用は膨らみます。人通りが多く、集客が期待できる好立地は当然ながら賃料が高額で、保証金や敷金といった契約時の初期負担も膨らみます。
一方で、費用を抑えようとして立地条件を妥協すると、今度は思うようにお客さまを呼び込めず、売上の確保に苦戦するリスクが生じます。
出典:日本政策金融公庫「2023年新規開業実態調査」(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kaigyo_231130_1.pdf)
経営を続けるためのランニングコスト
レストラン経営においては、開業時にかかる初期費用だけでなく、経営を続けるためのランニングコストも大きな負担となります。家賃や光熱費、食材の仕入れ代金、人件費など、毎月発生する固定費と変動費の合計は売上の大部分を占めることになります。
レストラン経営では、初期費用に加えて最低でも6か月分の運転資金を準備しておくことが推奨されています。新規開業したレストランが軌道に乗るまでには時間がかかるためです。
さらに忘れてはならないのが、経営者自身の生活資金です。売上が伸び悩む時期でも、家賃や食費など個人の生活費は毎月必要であり、経営上の支出とは別に計算しておかなければなりません。
また、ランニングコストは売上の好不調にかかわらず発生するため、景気の変動や天候不良、社会情勢の変化によって売上が一時的に落ち込んでも支払いは継続しなければなりません。
そのため、開業当初から損益分岐点を明確に意識した経営戦略を立てることが不可欠です。売上が多少落ち込んでも固定費をカバーできる体制を整え、無駄なコストを削減しながら効率的に運営する仕組みを作ることが、長期的に経営を続けていくために大切です。
競争激化と廃業率の高さ
レストラン業界は、ほかの業種と比べても競合が非常に多く、常に激しい競争にさらされています。中小企業庁「中小企業・小規模事業者の現状」によると、宿泊業・飲食サービス業の廃業率は約5.6%で、開業率も17.0%となっています。
つまり、開業率の高さは業界の人気や参入のしやすさを意味する一方で、廃業率の高さは競争の激しさを物語っています。
顧客のニーズやトレンドは常に変化し、味やサービスがよいだけでは差別化が難しいため、マーケティング力や経営戦略、リピーターを確保する仕組みなどが求められます。
このように、レストラン業界は「始めやすいが続けにくい」という特徴を持っており、単なる開業の成功ではなく、持続的に経営を安定させるための工夫と努力が不可欠だといえるでしょう。
出典:中小企業庁「中小企業・小規模事業者の現状」(https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2022/shokibo/b1_1_2.html)
レストラン経営者の収入はどれくらい?
レストラン経営者の収入は、業態の種類(高級レストラン、カフェ、居酒屋など)や立地条件、経営年数、店舗規模といった要素によって大きく差が出ます。
一般的には、平均年収400万〜600万円程度といわれていますが、この数値には長年経営を続けている店舗や、複数店舗を展開しているオーナーも含まれています。
そのため、開業して間もない時期や、まだ軌道に乗っていない店舗経営者の場合、収入はさらに低くなるケースが多く、場合によっては生活費をまかなうだけでも苦労することも少なくありません。
レストラン経営者の収入は一概に語れるものではなく、経営戦略の巧拙や立地条件、顧客との関係性によって大きく左右されるのが実情です。
開業を目指す人にとっては、夢の実現だけでなく「どのように利益を確保していくか」という現実的な視点を持つことが、長期的な成功と安定した収入につながるといえるでしょう。
レストラン経営に必要な資格・届出
レストランを開業するためには、必要な資格の取得と各種届出の提出が不可欠です。法的な要件を満たさなければ、営業許可を取得できません。
必要な資格
レストラン経営において、主に必要となる資格は以下の2つです。
【食品衛生責任者】
食品衛生責任者とは、お店の衛生管理を担当する責任者のことです。すべての飲食店で必ず置かなければならない資格で、レストラン経営には欠かせません。
・講習時間:1日(約6時間程度)
・費用:受講料 10,000円 + 教材費 2,000円
なお、調理師免許を持っている場合は、食品衛生責任者の資格を有するとみなされるため、別途取得する必要はありません。
【防火管理者】
収容人数が30人以上のレストランでは、防火管理者の選任が義務付けられています。防火管理者は、消防計画の作成や消防用設備等の維持管理、避難訓練の実施など、防火管理上必要な業務を行う責任者のことです。
・講習時間:甲種2日間(約10時間)、乙種1日(約5時間)
・費用:甲種 8,000円、乙種 7,000円
防火管理者には甲種と乙種があり、甲種は制限なく幅広く対応できるのに対し、乙種は施設の規模や用途によって制限があるのが大きな違いです。
出典:一般社団法人東京都食品衛生協会「食品衛生責任者養成講習会」(https://www.toshoku.or.jp/training/)
出典:一般財団法人日本防火・防災協会「防火管理講習」(https://www.bouka-bousai.jp/hp/lec_info/guide_bouka.html)
必要な届出
レストラン開業に必要な主な届出・申請は以下のとおりです。
| 届出・申請 | 届出先 | 概要 |
|---|---|---|
| 営業許可申請 | 保健所 | 開業の約10日前までに申請 |
| 食品衛生責任者設置届 | 保健所 | 営業許可申請と同時に提出 |
| 開業届 | 税務署 | 個人事業主は開業から1か月以内に提出 |
| 青色申告承認申請書 | 税務署 | 青色申告を希望する場合青色申告を適用する年の3月15日までに提出 |
| 労災保険加入手続き | 労働基準監督署 | 従業員を雇用する場合、事業を開始した日から 10日以内に提出 |
| 雇用保険加入手続き | ハローワーク | 従業員を雇用する場合10日以内に提出 |
また、午前0時を過ぎて酒類を提供する場合には、深夜酒類提供飲食店営業の届出も必要になります。
レストラン経営を成功させるために押さえておきたいポイント
レストラン経営の困難さを理解した上で、成功に導くための重要なポイントを見ていきましょう。
他店と差別化する
レストラン経営には、他店との明確な差別化が必要です。コンセプトが曖昧では、顧客に選んでもらう理由を提供できません。
コンセプトを決める際は、5W2Hの枠組みを活用しましょう。Who(誰に)、What(何を)、Where(どこで)、When(いつ)、Why(なぜ)、How(どのように)、How much(いくらで)を明確にすることで、具体的なコンセプトが見えてきます。
たとえば「平日の夜、疲れて帰ったサラリーマンに、家庭的な雰囲気のなかで、手頃な価格で本格的な和食を提供する」といった具合です。コンセプトが明確になれば、ターゲット層やメニュー構成、価格設定、店舗の雰囲気作りまで一貫性を持たせることができます。
開業準備の進め方を理解する
レストラン開業は計画的に進める必要があります。主な流れは以下のとおりです。
- コンセプトの決定
- 市場調査・競合分析の実施
- 事業計画書の作成
- 資金調達の実行
- 物件選定・契約
- 内装工事・設備導入
- 各種許認可の取得
- スタッフ採用・研修
- 広告宣伝・集客準備
- プレオープンの実施
それぞれの段階で十分な検討と準備を行うことが、開業後の成功につながります。とくに、事業計画書の作成は資金調達の成否を左右するため、売上予測や収支計画を現実的かつ具体的に作成することが重要です。
利益率に関わる指標を理解する
レストラン経営では「数字」が大切です。主要な経営指標を理解し、日々の経営判断に活用しましょう。
【利益率】
利益率 = 利益 ÷ 売上高 × 100
レストランの目安は8%程度です。これを下回る場合は、コスト削減や売上向上策を検討する必要があります。
【損益分岐点】
利益と損失がちょうど0になる売上高のことです。損益分岐点を下回れば赤字、上回れば黒字となります。日々の売上目標設定の基準となる重要な指標です。
【FL比率】
FL比率 = (食材費 + 人件費)÷ 売上高 × 100
レストランの場合、60%以下が目安とされています。この比率が高い場合は、メニュー構成の見直しや業務効率化が必要です。
レストラン経営における「ゴミ処理」の重要性とは?
レストラン経営において見落としがちですが、非常に重要な要素のひとつが「ゴミ処理」です。レストランから排出される廃棄物は「事業系一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類されます。
これらは家庭ゴミとは異なり、事業者が責任を持って処理しなければなりません。環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」にもとづき、適切な処理が義務付けられています。
適切な処理を怠ると、衛生面での問題や法令違反のリスクが生じ、最悪の場合は営業停止処分を受ける可能性もあります。
また、ゴミ処理費用は固定費として毎月発生するため、コスト管理の観点からも無視できない要素です。専門業者に委託することで、処理にかかる時間と労力を削減し、本来の業務に集中できます。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
ゴミの処分方法
レストランから排出される廃棄物の処分方法について、種類別に詳しく見ていきましょう。
一般廃棄物
事業系一般廃棄物とは、事業活動にともなって排出される廃棄物のうち、産業廃棄物以外のものを指します。具体的には、生ゴミ(調理くず、食べ残し)や紙類(おしぼり、紙ナプキン)のようなものが含まれます。
事業系一般廃棄物の処分方法は2つあります。ひとつは自分で自治体の処理施設に持ち込む方法、もうひとつは「一般廃棄物収集運搬業許可」を受けた業者に委託する方法です。
レストランでは、廃棄物の量が多いため、専門業者への委託がおすすめです。業者に委託することで、定期的な回収や適切な処理が保証され、従業員は業務に専念できます。
産業廃棄物
産業廃棄物とは、事業活動にともなって発生する廃棄物のうち、法律で定められた20種類の廃棄物を指します。具体的には、以下のようなものが含まれます。
・廃油(使用済みの天ぷら油など)
・廃プラスチック類
・金属くず(缶詰の缶など)
・ガラスくず・陶磁器くず
産業廃棄物は、都道府県から「産業廃棄物収集運搬業許可」を受けた専門業者に委託する必要があります。一般廃棄物とは処理方法が異なるため、分別を正しく行い、それぞれ適切な業者に依頼することが重要です。
産業廃棄物の処理にお悩みの方はイーブライトにご相談ください。
廃棄物処理法を遵守し、企業から排出された廃棄物を収集・分別・リサイクルしております。
サービス対応地域や車両、定期回収できる品目などもぜひあわせてご覧ください。
不法投棄の危険性
事業系ゴミを家庭ゴミとして処分することは不法投棄にあたり、重大な法令違反となります。「知らなかった」では済まされない問題です。
たとえば、不法投棄を行った場合の罰則は非常に厳しく、5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科せられます。
こうしたリスクを避けるためにも、開業時から適切なゴミ処理体制を整備することが不可欠です。
イーブライトに所属するゴミ回収ガールが、インスタグラムでゴミに関する情報を配信中!フォローやDMもお待ちしております!
まとめ
レストラン経営は確かに困難が多い事業ですが、適切な知識と準備があれば成功への道筋を描くことは十分可能です。
高い初期費用や激しい競争、低い利益率といった壁が立ちはだかりますが、明確なコンセプトのもとで差別化を図り、数値管理を徹底することで乗り越えることができます。
とくに見落とされがちなゴミ処理については、法令遵守の観点からも適切な業者への委託が不可欠です。専門業者に任せることでリスクを回避し、本業に専念できる経営環境を整えることが可能となります。
レストランのゴミ回収の委託を検討している方は「イーブライト」にお任せください。イーブライトでは、レストラン経営者の皆様のゴミ処理に関するお悩みを解決するため、一般廃棄物・産業廃棄物の適切な処理サービスを提供しています。
飲食店を中心にサービスを提供しており、グリストラップの清掃・衛生管理・悪臭対策のご対応も可能です。さらに、排出量や処分費用を明確にするため、計量器付きパッカーを導入しています。
ゴミ処理に関するお悩みは、イーブライトにご相談ください。