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一斗缶の正しい処分方法丨家庭用と事業用の違いからつぶし方・注意点まで解説

食用油やペンキ、洗剤などの保存容器として幅広く利用されている一斗缶ですが、使い終わった後の処分方法に悩んだ経験はありませんか?
実は、一斗缶の処分方法は「家庭で使用した場合」と「事業で使用した場合」とで大きく異なります。もし適切に処分を行わなければ、思わぬ法的トラブルにつながる恐れがあるため注意が必要です。
この記事では、一斗缶の正しい処分方法や中身の処理手順、さらに安全につぶすためのポイントについて、廃棄物処理法を参考にしながら解説します。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
一斗缶の処分方法は「家庭用」と「事業用」で異なる
一斗缶を処分する際に最も重要なのは、その一斗缶が「家庭用」なのか「事業用」なのか正しく判断することです。
家庭用とは、一般家庭でDIYや保存容器として個人的に使用した一斗缶を指します。一方で、事業用は飲食店や塗装業者などが事業活動のなかで使った一斗缶を意味します。
この区別が重要な理由は、廃棄物処理法により処分方法が明確に分けられているためです。
たとえば、飲食店で食用油を保存していた一斗缶は、たとえひとつだけでも産業廃棄物として扱わなければなりません。この違いを理解せずに間違った処分を行うと、廃棄物処理法違反となり重い罰則が科される可能性があります。
処分前には必ず、その一斗缶がどちらに該当するかを確認しましょう。
【家庭用】一斗缶の処分方法
家庭で使用した一斗缶は、自治体のごみ回収サービスを利用して処分できます。ただし、自治体によって分別方法が異なるため、必ず事前に確認が必要です。
自治体のごみ回収を利用する
一斗缶を家庭で処分する際には、まず自治体のルールに従うことが基本となります。多くの地域では「不燃ごみ」または「資源ごみ」として扱われていますが、一部では「粗大ごみ」として分類されることもあります。
分別方法を誤ると回収されなかったり、追加の手続きが必要になることがあるため、注意が必要です。
不燃ごみ・資源ごみとして処分する場合
多くの自治体では、一斗缶を「不燃ごみ」または「資源ごみ」として処分できます。一斗缶はスチールやブリキなどリサイクル可能な素材で作られているため、資源ごみとして回収している自治体が多いのが特徴です。
処分する際は、まず中身を完全に空にして軽く水洗いします。汚れが残っているとリサイクルできないため、できるだけきれいな状態にしておきましょう。自治体によっては「できるだけつぶして出してください」と指示がある場合があります。
粗大ごみとして処分する場合
横浜市や京都市など、一部の自治体では一斗缶を「粗大ごみ」として処分します。粗大ごみの場合は事前申し込みが必要で、処分手数料もかかります。
処分手順は次のとおりです。
1.自治体の受付窓口に電話またはインターネットで申し込みを行い、収集日時と処分手数料を確認する
2.コンビニやスーパーなどの指定販売店で粗大ごみ処理券を購入する
3.処理券に必要事項を記入して一斗缶に貼り付け、収集日当日の朝に指定場所へ出す
ただし、ごみ処理施設への持ち込みが可能な自治体では、即日処分も可能です。車で直接持ち込めば収集日を待つ必要がなく、手数料も安くなる場合があります。
専門業者に買い取ってもらう
状態のよい一斗缶は、金属リサイクル業者に買い取ってもらえる場合があります。一斗缶は鉄やスチールなどの金属でできているため、資源として価値があります。
買い取りを行っているのは、製鋼加工所や鉄スクラップ卸売業者、製缶所などです。インターネットで近くの業者を探し、まずは電話で問い合わせてみましょう。
また、フリマアプリやネットオークションでの売却も選択肢のひとつです。DIYやアウトドア用品として一斗缶を欲しがる方がいるため、きれいな状態であれば買い手が見つかる可能性があります。
不用品回収業者に引き取ってもらう
自治体での処分が面倒な場合や、すぐに処分したい場合は不用品回収業者への依頼もおすすめです。
不用品回収業者なら、一斗缶を家のなかから運び出し、車両への積み込み、運搬まですべて行ってくれます。重い一斗缶を持ち運ぶ必要がなく、高齢者や力仕事が苦手な方でも安心です。
また、一斗缶以外の不用品もまとめて処分できるため、大掃除や引っ越しの際にも便利です。
業者によっては最短即日対応も可能で、申し込んだその日のうちに回収してもらえる場合があります。急いで処分したい方には最適な方法といえるでしょう。
リサイクル団体に引き取ってもらう
一斗缶はリサイクル可能な素材で作られているため、回収を行いリサイクルしている専門業者に依頼できます。
たとえば、全国18リットル缶工業組合連合会では個人からの回収も受け付けており、環境保護に貢献できる処分方法として利用されています。
ただし、回収には条件があります。対象となるのは塗料、化学工業品、油脂、油糧、食料品、石油などに使われる金属製の18リットル缶であり、中身を完全に空にしておくことが必須です。
さらに、回収方法や日時について事前に打ち合わせを行う必要があるため、手続きに時間がかかる場合があります。
【事業用】一斗缶の処分方法
事業で使用した一斗缶は「産業廃棄物」として扱われ、自治体での処分はできません。飲食店、塗装業者、製造業などが事業活動で使用した一斗缶は、事業規模に関係なくすべて産業廃棄物です。
産業廃棄物とは
産業廃棄物とは、事業活動にともなって生じた廃棄物処理法で規定される20種類の廃棄物を指します。一斗缶はこのうち「金属くず」に分類されます。
産業廃棄物の定義で重要なのは、事業活動で発生したかどうかです。たとえ個人経営の小さな飲食店で出たひとつの一斗缶であっても、事業で使用したものであれば産業廃棄物となります。
家庭ごみと産業廃棄物の違いは、処分責任の所在にあります。家庭ごみは自治体が処分責任を負いますが、産業廃棄物は「排出事業者責任」により、発生させた事業者が最後まで処分責任を負わなければなりません。
イーブライトでは、産業廃棄物に関する記事を掲載しています。
基本的な定義や一般廃棄物との違いを取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
産業廃棄物の処分方法
産業廃棄物の処理は、法律で定められた4つのステップで行われます。
まず「分別・保管」では、廃棄物を種類ごとに正しく分別し、適切な場所で保管します。保管場所には掲示板の設置が義務付けられており、廃棄物の種類や管理者の氏名などを明記する必要があります。
次の「収集・運搬」では、専用の車両と資格を持つ業者が廃棄物を処理施設まで運搬します。運搬時には産業廃棄物管理票(マニフェスト)の携帯が義務付けられています。
「中間処理」では、廃棄物の種類に応じて破砕や選別などを行い、最終処分しやすい状態にします。一斗缶の場合は、破砕処理により小さく砕かれることが一般的です。
最後の「再生・最終処分」では、可能な限りリサイクルが行われます。一斗缶は金属素材のため、多くの場合は溶かされて新しい鉄製品の原料として再利用されます。
自分で処理施設へ持ち込む
事業者自らが産業廃棄物を処理施設へ持ち込む方法もあります。この方法の最大のメリットは処分費用を安く抑えられることです。
しかし、持ち込みには多くの条件があります。まず、専用の車両が必要で、車両には産業廃棄物収集運搬車である旨の表示をしなければなりません。また、マニフェストの記載や必要書類の携行など、法的な手続きが複雑です。
さらに、処理施設の受付時間は平日の日中のみの場合が多く、事業への影響を考慮する必要があります。手続きの煩雑さとリスクを考えると、一般的にはおすすめできない方法です。
業者に処分を依頼する
最も安全で確実な方法は、許可を持った産業廃棄物処理業者への委託です。専門業者なら、法的な手続きをすべて代行してくれるため、事業者の負担が大幅に軽減されます。
業者選びで重要なのは、適切な許可を持っているかの確認です。産業廃棄物収集運搬業許可と産業廃棄物処分業許可の両方を確認し、委託契約書を必ず締結しましょう。
また、マニフェストの交付も業者の重要な役割です。マニフェストは産業廃棄物が適正に処理されたことを証明する書類で、紙マニフェストの場合は5年間の保存義務があります。
一方、電子マニフェストを利用すればデータがシステム上で管理されるため、事業者側で書類を保管する必要がありません。専門業者に委託すれば、余計な手間をかけずに適法な処分を実現できます。
定期的に一斗缶が発生する事業所では、定期回収契約を結ぶことでコストを抑えられるケースもあります。事業者にとって、お得で安心できる方法といえるでしょう。
こちらの記事では、飲食店ごみの回収について解説しています。
費用相場や回収を依頼するメリットも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
産業廃棄物の処理責任は排出事業者にある|違反した際の罰則は?
廃棄物処理法では、産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあることが明確に規定されています。これを「排出事業者責任」と呼び、処理業者に委託した場合でも最終的な責任は排出事業者が負います。
適正な処理を怠った場合の罰則は非常に重く、違反の内容により罰金刑や懲役刑が科されます。
不法投棄を行った場合、5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。法人の場合は罰金の上限が3億円まで引き上げられるなど、極めて重い処罰となります。
マニフェストの交付義務違反の場合は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
委託基準違反(無許可業者への委託など)の場合は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはこの併科となります。
これらの罰則を避けるためには、適切な業者選びと正しい手続きが不可欠です。少しでも不安がある場合は、専門業者に相談することをおすすめします。
イーブライトでは、産業廃棄物処理に関する相談を受け付けております。
お困りの際にはぜひお問い合わせください。
一斗缶に残った油や塗料を捨てる方法
一斗缶を処分する前に、中身の適切な処理が必要です。油や塗料などの液体は、そのまま排水口に流すと環境汚染の原因となるため、正しい処理方法を覚えておきましょう。
余った油の捨て方
食用油が残っている場合は、新聞紙や古布に吸わせてから燃えるごみとして処分します。この方法が最も一般的で安全です。また、大量の油がある場合は、市販の凝固剤を使用して固めてから捨てる方法もあります。
エンジンオイルなど工業用の油の場合は、自治体によって処分方法が異なります。多くの自治体では受け入れを行っていないため、購入店やガソリンスタンドでの回収を利用しましょう。
処理する際は必ず換気のよい場所で行い、油の自然発火を防ぐため水を一緒に染み込ませることが重要です。とくに大量の油を処理する場合は、少量ずつ分けて作業しましょう。
余った塗料の捨て方
塗料の処分は油以上に注意が必要です。塗料には有機溶剤が含まれている場合が多く、人体や環境への影響を考慮した処理が必要です。
水性塗料の場合は、新聞紙や古布に少量ずつ吸わせて十分に乾燥させてから可燃ごみとして処分します。作業時はマスクと手袋を着用し、風通しのよい屋外で行いましょう。
油性塗料の場合は、より注意が必要です。シンナーなどの有機溶剤による健康被害を避けるため、マスク、ゴーグル、長袖の作業着を着用しましょう。また、作業は必ず屋外で行い、火気を近づけないよう注意が必要です。
塗装専門店やペンキ屋では、余った塗料の引き取りサービスを行っている場合があります。
【事業者向け】廃油・廃塗料も産業廃棄物扱いになる
事業活動で発生した廃油や廃塗料は、容器と同様に産業廃棄物として扱わなければなりません。上記と同様の処分はできません。
廃油は産業廃棄物の「廃油」に分類され、廃塗料は成分によって「廃プラスチック類」「汚泥」「廃油」などに分類されます。
事業者が自己判断で家庭ごみとして処分することは法律違反となります。たとえ少量であっても、産業廃棄物処理業者に委託して適正に処分しなければなりません。
廃塗料の場合、複数の廃棄物の混合物として扱われることが多く、処分方法も複雑になります。専門知識を持った業者に相談し、適切な処理方法を確認することが重要です。
処分費用は廃棄物の種類や量によって異なりますが、適正処理を怠った場合の罰則を考えれば、専門業者への委託は必要な経費といえるでしょう。
一斗缶のつぶし方
自治体によっては一斗缶をつぶして出すよう指導している場合があります。ただし、つぶし作業にはケガのリスクがともなうため、十分な注意が必要です。
【準備するもの】
・工具:皮スキ(またはカッター)、トンカチ、軍手
・汚れてもよい服装
・作業場所:庭や倉庫など屋外
【手順】
1.上面に切り込みを入れる
注ぎ口がある上面の3辺に皮スキで切り込みを入れる。
完全に切り離さず、7割程度まで切り込めば十分。
2.上面を内側に折り込む
切り込みを入れた部分をトンカチで叩き、内側へ折り込む。
缶の縁で手を切る恐れがあるため、軍手を必ず着用して慎重に作業する。
3.底面に切り込みを入れる
缶をひっくり返し、底面の3辺にも同じように切り込みを入れる。
4.底面を内側に折り込む
トンカチで叩いて、切り込み部分を内側へ折り込む。
5.横倒しにして踏みつぶす
缶を横向きに倒し、板状になるまで足でしっかり踏み潰す。
6.さらに半分に折り畳む
板状になった缶を半分に折り、再び足で踏む。平らになれば作業完了。
慣れれば10分程度で1個をつぶせますが、初回は30分程度かかることもあります。
ただし、この作業は相当な体力を必要とします。高齢者や力仕事が苦手な方、大量の一斗缶を処分する必要がある場合は、無理をせずほかの処分方法を検討しましょう。
一斗缶を処分する際の注意点
一斗缶を安全かつ適法に処分するために、必ず守るべき注意点があります。これらを怠ると、処分を拒否されたり法的なトラブルに発展したりする可能性があります。
中身を空にしてから処分する
どの処分方法を選ぶ場合でも、一斗缶の中身は必ず完全に空にしなければなりません。これは安全面と環境面の両方から必要な処理です。
中身が残ったまま処分すると、収集時に漏れて作業員がケガをする恐れがあります。また、リサイクル施設での機械故障や環境汚染の原因にもなります。
できるだけ中身を使い切った後、水洗いして乾燥させるのが理想的です。汚れがひどい場合は中性洗剤を使用し、十分にすすいでから乾かしましょう。
完全に乾燥していない状態で処分すると、錆の原因となりリサイクルの妨げになります。とくに湿気の多い時期は、しっかりと乾燥させてから処分することが大切です。
一斗缶の状態によっては回収方法が異なる
一斗缶の状態によって、適用される処分方法が変わる場合があります。状態の確認は処分前に必ず行いましょう。
錆がひどく進行している一斗缶や、大きく変形している一斗缶は、資源ごみとして回収できない場合があります。このような場合は不燃ごみとして処分するか、不用品回収業者に相談しましょう。
塗料が固まって取れない場合や、強い臭いが残っている場合も、通常のリサイクル処理ができません。自治体の指示に従い、適切な分別区分で処分する必要があります。
判断に迷う場合は、自治体の窓口に直接問い合わせることをおすすめします。写真を見せながら相談すると、より正確な分別指導を受けられるでしょう。
無理に潰さない
一斗缶をつぶすことで容積を減らせますが、無理な作業は避けるべきです。つぶし作業には工具と体力が必要で、ケガのリスクも高いからです。
とくに力に自信がない方や、工具の扱いに慣れていない方は、そのままの状態で処分しましょう。多くの自治体では、つぶさなくても回収してくれます。
つぶし作業中のケガで最も多いのは、缶の縁での切り傷です。また、工具の使い方を誤ると打撲や刺し傷の原因になります。安全を最優先に考え、不安がある場合はほかの方法を選択しましょう。
大量の一斗缶を処分する事業所では、専用のプレス機の導入も検討に値します。ただし、家庭レベルでは費用対効果を考えると現実的ではありません。
不法投棄しない
一斗缶を山林や河川、空き地などに不法投棄することは重大な犯罪です。不法投棄は環境汚染の原因となり、生態系に深刻な影響を与えます。
不法投棄の罰則は非常に重く、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科されます。法人の場合は3億円以下の罰金となり、企業の社会的信用も失墜します。
また、不法投棄の清掃費用は投棄者の負担となります。清掃費用は数十万円から数百万円に及ぶ場合もあり、刑事処分に加えて多額の民事負担が発生します。
事業用の場合はきちんと産業廃棄物として処分する
事業で使用した一斗缶は、規模や個数に関係なく必ず産業廃棄物として処分しなければなりません。「少量だから」「個人事業だから」という理由で家庭ごみとして出すことは法律違反です。
産業廃棄物を自治体のごみ収集に出すと、収集拒否されるだけでなく、不適正処理として行政指導の対象になります。悪質な場合は営業停止処分や刑事告発に発展することもあります。
また、無許可業者への委託も同様に違法行為です。「安い」「手軽」といった理由で無許可業者に依頼すると、委託者も処罰の対象となります。
産業廃棄物の適正処理は事業者としての社会的責任です。適正な処理を行うことで、企業の信頼性向上にもつながります。必ず許可業者に委託し、マニフェストを適切に管理しましょう。
まとめ
一斗缶の処分方法は、家庭用と事業用で大きく異なります。家庭用は自治体の回収サービスや不用品回収業者を利用でき、事業用は産業廃棄物として専門業者での処理が必要です。
とくに事業者の方は、適正な処分を怠ると重い罰則が科される可能性があるため注意が必要です。少量であっても必ず産業廃棄物として処理し、許可業者への委託とマニフェストの管理を徹底しましょう。
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