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事業ゴミの処理に必要な勘定科目とは?仕訳の科目一覧と運用ポイント

会計処理の経験が浅い担当者にとっては、事業ゴミの処理の際にどの勘定科目を使えばよいか判断に迷う場面も多く、仕訳作業に不安を感じる場合があります。税務調査で指摘を受けないためには、適切な仕訳処理が必要不可欠です。
この記事では、事業ゴミの処理にかかる費用を中心に、適切な勘定科目の選び方や勘定科目の定義、使い分けのポイントをわかりやすく解説します。
事業ごみの処理費用の主な勘定科目
そもそも勘定科目とは、取引で発生したお金の流れを表すための見出しです。たとえば、入金が発生したときは売上の勘定科目を、商談のために新幹線を利用したときは旅費交通費の勘定科目を使用します。
勘定科目によって、より詳細にお金の流れを把握することが可能です。また、入出金の予定も把握しやすくなります。
事業ゴミの処理費用を仕訳する際に用いる勘定科目は、以下のとおりです。
支払手数料
支払手数料とは、事業に付随して発生する手数料の仕訳をする際に用いる勘定科目です。具体的には、金融機関でお金を振り込む際に必要な振込手数料や、システムの使用料などが支払手数料に該当します。
事業ゴミの処理においては、ゴミ処理券を仕訳する際は支払手数料を用いるケースが多くなります。たとえば、10枚1組で500円するゴミ処理券を購入した場合、帳簿に記載する仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
支払手数料 | 500円 | 現金 | 500円 | ゴミ処理券購入費用 |
ゴミ処理券購入費用
なお、仕訳の勘定科目で支払手数料を使用するのは、定期的にゴミ処理券を購入する場合です。ゴミ処理券の購入頻度が少なく、金額も低い場合は、別の勘定科目の雑費を用いて仕訳を行いますが、詳細は該当の勘定科目を取り上げる際に解説します。
清掃費
清掃費とは、オフィスや施設の清掃にかかった費用の仕訳をする際に用いる勘定科目です。とくに粗大ごみのような処分費用は金額が大きくなる傾向があるため「雑費」として処理すると内容が不明確になり、会計上の信頼が損なわれるおそれがあります。
以下は、自社オフィスの清掃をした際に発生した粗大ゴミの処分をするために、8万円の費用がかかったときの仕訳になります。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
清掃費 | 80,000円 | 現金 | 80,000円 | 粗大ゴミの処理費用 |
清掃費が少額の場合は雑費として仕訳するケースもありますが、費用が高額のときは会計内容が不明確になります。その場合は、衛生管理費をはじめ、必要に応じて別の勘定科目を作った仕訳がおすすめです。
外注費
外注費とは、外部の法人や個人と契約を結び、業務の一部を委託する際に支払う費用を仕訳する際に用いる勘定科目です。具体的には、製品のパッケージデザインを外部のデザイナーに任せるときにかかる費用や、新しいWebサイトの構築をWeb制作会社に依頼するときにかかる費用などが挙げられます。
事業ゴミの処理を外部の業者に委託した場合、その費用は「外注費」として仕訳するのが一般的です。以下は、3万円で専門業者に事業ゴミの処理を委託した場合の仕訳の例です。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
外注費 | 30,000円 | 現金 | 30,000円 | ○○業者への委託費用 |
なお、「支払手数料」は、弁護士や司法書士、会計士などのように、専門性の高い知識を有する人物への報酬や、振込手数料などの手数料的性質を持つ支払いに使用する勘定科目です。事業ゴミの処理費用を誤って支払手数料として計上すると、会計処理の整合性を欠くおそれがあります。
設備維持費
設備維持費とは、設備を正常に保つための支出に用いる勘定科目です。修繕や点検にともなって不要となった機材や廃材の処分費用も含まれるためです。
その際、設備維持費の勘定科目を使用して、発生した不用品の処分費用の仕訳を行います。たとえば、自社設備の修繕を行い、不用品の処分費用と一緒に修繕の費用5万円を支払った場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
設備維持費 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 | 不用品の処理費用 |
たとえば、不用品の処理が事務用品などの廃棄であれば「雑費」社内全体の清掃が目的であれば「清掃費」など、状況に応じて勘定科目を使い分ける必要があります。しかし、設備の維持や修繕にともなう費用であれば、処分費用を含めて「設備維持費」として一括で処理する方が、経費の内容を明確にしやすくなります。
雑費
雑費とは事業上の費用のうち、ほかの勘定科目に該当しない費用を処理する際に使用する汎用的な勘定科目です。一般的には、少額かつ一時的な出費や、ほかの勘定科目では処理できない費用を雑費として処理します。
事業ゴミの処理においては、不定期にゴミの処分が発生する場合に使用する勘定科目です。たとえば、事業活動のなかで不定期に発生するゴミ処理費用として、10枚1組のゴミ処理券を500円で購入した場合、以下のような仕訳になります。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
雑費 | 500円 | 現金 | 500円 | ゴミ処理券購入費用 |
雑費と混同されやすい勘定科目として「消耗品費」が挙げられます。消耗品費は、使用可能期間が1年未満または取得価額が10万円未満の什器備品の購入費です。
ゴミ処理券は一見すると、消耗品費に該当しているように思えます。しかし、今回のケースではゴミ処理券の購入は突発的なもの、かつサービスに対する支払いのため「消耗品費」ではなく「雑費」としての処理が適切です。
その他
日常的に事業ゴミの処理を行っている場合は、その費用は「売上原価」として仕訳します。売上原価とは、商品の製造やサービス提供の仕入や製造の過程で必要になった費用のことです。
常に業務のなかで事業ゴミの処理を行っている場合、売上に関連しているとみなされるため、売上原価として仕訳ができます。たとえば、製造現場や施工現場などで作業中に発生したゴミの処分費用として10万円支払った場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
売上原価 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 | 廃棄物処理費用 |
事業ゴミの仕訳を売上原価で行う場合、ほかの売上原価と混同しないようにしましょう。おすすめなのは、産業廃棄物処理のように、新しい科目を作成する方法です。科目が明確になり記載が楽になるのはもちろん、税務署サイドも経費の中身を理解しやすくなり、会計管理の効率も向上します。
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事業ゴミの仕訳は一般廃棄物会計基準に準じる
仕訳の仕方は、一般廃棄物会計基準に準じます。一般廃棄物会計基準とは、一般廃棄物処理事業の効率的な運営を助けるために、コスト分析の標準的な手法を示したものです。
一般廃棄物会計基準には4原則が存在しており、以下ではそれぞれの詳細について解説します。
理解可能性の原則
ひとつ目の原則は、理解可能性の原則です。理解可能性の原則とは、会計情報を誰にでもわかりやすく伝えるための重要な基準です。一般廃棄物会計基準では「地方公共団体の一般廃棄物の処理に関する事業に係る財務書類が、会計の専門知識を有しない一般の住民にとって、できるだけ簡潔にわかりやすく作成され、理解できるものとなっているか」と説明されています。
廃棄物の処理にかかる費用や収支に関する情報が、専門用語だらけで複雑な構成になっていた場合、住民が内容を正確に理解するのは困難です。そのため、誰にとっても読みやすく、理解しやすい形式での財務書類の作成が求められます。廃棄物の処理は、環境保全や地域住民の健康に直結する公共性の高い事業のため、情報公開の透明性と明確さが欠かせません。
出典:環境再生・資源循環局 廃棄物適性処理推進課(改定)一般廃棄物会計基準
(https://www.env.go.jp/recycle/waste/tool_gwd3r/ac/ac.pdf)
目的適合性の原則
目的適合性の原則とは、作成した一般廃棄物の処理に関する書類が、情報としてどの程度有用であるかを判断するための基準です。この原則が満たされている場合、情報利用者はその財務情報をもとに、将来の見通しを立てたり、施策の評価を行ったりできます。
廃棄物処理に関する書類が適切に整備されていれば、来年度の予算編成の収支の見通し、施策の効果分析に役立ちます。結果として、生活環境の保全や公衆衛生の向上といった本来の目的も満たします。
目的適合性の原則の有無を判断するポイントは、以下のとおりです。
・事後的評価可能性:情報利用者が過去の施策や財務情報を評価できるか
・予測・シミュレーション可能性:将来の財政状態や事業運営の見通しを立てるのに活用できるかどうか適時性:財務書類が遅延なく作成されているか
目的適合性の原則を意識して書類を作成・整備することで、事業の透明性が高まり、住民や利害関係者にとって信頼性の高い情報提供が実現します。
信頼性の原則
信頼性の原則とは、一般廃棄物の処理に関する財務書類において、情報がどの程度信頼に値する正確性と真実性を有するかを意味します。信頼性の原則の有無を判断する基準は、以下のとおりです。
・実質優先主義:財務情報が取引や事象の法律的な形式ではなく、実質と経済的な実態を反映しているか
・中立性:特定の立場に偏らず、情報利用者が公平な判断を下せるような内容になっているか
・表示の忠実性:財務書類の記載内容が、実際の取引や経済活動を正確に表しているか
これらの基準は、財務書類を真実にもとづいて作成していれば、とくに問題なく満たせるものばかりです。過剰な心配は不要ですが、基本的な原則をふまえた正確な記帳をしていきましょう。
その他の一般原則
一般廃棄物会計基準における、その他の一般原則は以下のとおりです。
・重要性:財務情報に省略または誤表示があれば情報利用者の意思決定に影響を及ぼすが、どの程度の省略または誤表示ならば許容し得るか
・比較可能性:財務情報が会計期間またはほかの地方公共団体との間で比較し得るものか
なお、一般廃棄物会計基準には完全性の原理が存在します。平たくいえば、すべての財務活動をもれなく記録することを求める原則です。
地方公共団体と一般事業者は、それぞれ異なる原理が組み込まれているため、書類を作成する際は注意しましょう。
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実務で役立つ勘定科目の基本的なルール
勘定科目にはさまざまなルールがあり、押さえることでスムーズに仕訳作業を進めることが可能です。以下では、実務で役立つ勘定科目における基本的なルールについて解説します。
これから初めて仕訳する方は、実務の前にぜひ目をとおしておきましょう。
自社に合った科目を自由に設定できる
仕訳をするにあたって、勘定科目は自社の状況に合わせて自由に設定できます。企業会計に「経理自由の原則」が認められているためです。今回取り上げた勘定科目をはじめ、勘定科目にはさまざまな種類がありますが、特定の勘定科目を必ず使用しなければならない法的な決まりはありません。
そのため、独自の勘定科目を作成し、その勘定科目を用いて書類作成を行うことも可能です。今回紹介した「清掃費」「外注費」「設備維持費」なども、業務の実態に応じて名称や分類を見直し、自社に適した勘定科目として新たな設定も可能です。
ただし、財務諸表をはじめ、勘定科目を用いて作成する書類は外部に提示する機会も多くなります。もし独自の勘定科目ばかりが書類に並んでいると、第三者は書類の内容を理解できず、企業会計の透明性を確保できません。
基本的には、第三者が読んでも理解できるように、一般的な勘定科目をベースに書類を作成しましょう。
一度決定した科目は変更せず使い続ける
勘定科目は、一度設定したら基本的に使用を継続しましょう。企業会計には「継続性の原則」が存在しています。
これは、経営者による恣意的な利益操作を排除するためのルールです。もし複数の会計処理が認められてしまうと、その時々で会社にとって都合のよい会計処理の方法が選択されかねません。
また、恣意的な利益操作ができてしまうと、決算書の期間比較ができず、利害関係者の判断を誤らせる可能性があります。正しい判断ができなければ、利害関係者の企業経営に深刻な悪影響を与えます。
書類の信頼性を確保するためにも、勘定科目は変更しないようにしましょう。なお、期中に業務形態が変化した場合、合理的な理由があるときは、例外的に勘定科目を変更できます。
社内で統一した名称を使用する
勘定科目は、社内で名称と使い方の統一した運用が重要です。部署や担当者ごとに異なる勘定科目を使用してしまうと、会計処理に混乱が生じ、正確な帳簿や決算書の作成が難しくなるためです。
勘定科目のなかには、内容が似ていて判断が難しいケースがあります。実際に、勘定科目の使い分けがあいまいなまま運用されると、誤った仕訳が繰り返され、正確な書類を作成できず、自社の信頼性を大きく損ねる事態にもなりかねません。
トラブルを防ぐためにも、あらかじめ社内でどの勘定科目を用いるのか、ルールを決めておきましょう。勘定科目の数が多い場合は、社内規定として使用する勘定科目を一覧化しておくと親切です。
明確で理解しやすい名称を使用する
勘定科目は、明確かつ理解しやすい名称のものを使用しましょう。勘定科目のなかには、業界の専門用語や難解な用語、そして抽象的な言葉が用いられているものもあります。
ある程度経験がある方なら対応できるかもしれませんが、新入社員や経理部門以外の従業員は理解できない可能性が高くなります。もし正確に勘定科目を理解できない場合、入力ミスをはじめ、帳簿の整合性が保てず、確認や修正作業に時間がかかり、業務効率も大きく損なわれます。
トラブルを避けるためにも、勘定科目は業務の実態に即した、具体的な名称のものを選択しましょう。
まとめ
事業ゴミの処理を適切に会計処理する際は、状況に応じた勘定科目を正しく使い分けていきましょう。仕訳に対して苦手意識を持つ方もいますが、ルールを作成し、それを守ればとくに難しいことはありません。適切な勘定科目を使用し、理解しやすい書類を作成できれば、企業の信頼性を高めることにもつながります。
なお、ゴミの処理業務は信頼できる専門業者に任せてみるのも一案です。
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