COLUMN コラム
カレー屋開業の始め方丨資金や資格から成功のポイントまで解説
カレー屋を開業したいと考えているものの「どのくらいの資金が必要なのか」「どんな資格や手続きが必要なのか」と悩んでいませんか?
カレーは国民食として幅広い年齢層に愛され、安定した需要が見込まれる魅力的なビジネスです。しかし、成功するためには適切な準備と戦略が欠かせません。
この記事では、カレー屋開業に必要な資金や資格、成功のポイントを詳しく解説します。とくに見落としがちなごみ処理のルールについても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

カレー屋を開業するメリット
カレー屋の開業には、ほかの飲食店にはない魅力的なメリットがあります。ここでは、カレー屋を開業するメリットについて解説します。
子どもから大人まで需要が安定している
カレーは日本の国民食として定着しており、年齢や性別を問わず愛され続けています。カレーが嫌いという人はほとんどいないのではないでしょうか。
この安定した人気により、季節やトレンドに左右されにくい需要が期待できます。夏場には「スパイスで食欲増進」、冬場には「温かいカレーで体を温める」といったように、一年を通して顧客のニーズがあります。
調理師免許は不要
カレー屋の開業に調理師免許は必須ではありません。カレー作りはスパイスの配合から始まることが多く、趣味の延長として本格的なカレーを作れるようになった人が開業するケースも珍しくありません。
もちろん、調理師免許があれば店舗の信頼性向上につながりますが、なくても十分開業可能です。この参入しやすさは、飲食業界未経験者にとって大きなメリットと言えるでしょう。
スパイスでオリジナリティを出しやすい
カレーに使用されるスパイスは60種類以上に及び、その配合により味が大きく変わります。この特性により、他店では味わえない独自のカレーを作り出すことが可能です。
インド、スリランカ、ネパール、タイ、欧風、スープカレーなど、カレーの種類も豊富で、地域や客層に合わせた選択ができます。さらに、見た目にもこだわることで、SNS映えする一品に仕上げることもできるでしょう。
回転率が高い
カレー屋は飲食業界のなかでもとくに回転率の高い業態です。牛丼店でもカレーを提供しているのは、その回転率の高さを物語っています。
カレーは大量に仕込みができ、注文が入ってから温めてライスやナンに添えるだけで提供できます。調理時間が短く、提供までのスピードが早いのが特徴です。
また、カレーは1人客が多く、食事を終えたら長居せずに帰る顧客が多い傾向にあります。この高い回転率により、限られた座席数でも効率的に売上を上げることが可能です。
カレー屋を開業するデメリット
カレー屋開業には多くのメリットがありますが、事前に把握しておくべきデメリットもあります。これらの課題を理解し、対策を練ることで成功確率を高められるでしょう。
競合店が多い
カレー屋は参入障壁が比較的低いため、個人店からチェーン店まで多くの競合が存在します。
このような環境では、単においしいカレーを提供するだけでは差別化が困難です。競合との違いを明確にする独自のコンセプトや、効果的なマーケティング戦略が不可欠になります。
しかし、見方を変えればカレー市場の大きさを表しているともいえ、適切な戦略があれば十分成功の可能性があります。
客単価が低い
カレー屋の大きな課題のひとつが客単価の低さです。一般的にカレーは価格設定が低く、ご飯の大盛りやサラダなどを追加しても、ほかの飲食業態と比較して客単価は低い傾向にあります。
また、カレーは一品で満足できる料理のため、追加注文が少ないのも要因のひとつです。アルコールと一緒に楽しむ文化もそれほど根付いていません。
この課題を克服するには、魅力的なトッピングメニューの開発や、店舗の付加価値向上による単価アップが重要になります。
カレー屋の開業にかかる費用
カレー屋開業を現実的に検討するためには、具体的な資金計画が必要です。開業形態や立地によって費用は大きく変動しますが、しっかりとした資金計画を立てることで無理のない開業が可能になります。
初期費用
カレー屋の初期費用は、店舗規模や立地、開業形態によって大きく変動します。一般的な店舗型カレー屋の場合、以下のような内訳になります。
【物件取得費:200万〜500万円】
保証金、礼金、仲介手数料、前家賃などが含まれます。立地や物件の人気度により大きく変動し、都市部では高額になる傾向があります。居抜き物件の活用やフランチャイズ加盟により、これらの費用を大幅に削減することも可能です。
【内装・外装工事費:100万〜1,500万円】
居抜き物件を利用すれば100万〜300万円程度で済む場合もありますが、スケルトン物件では大幅に費用が増加します。
【厨房設備費:150万〜800万円】
調理器具、冷蔵・冷凍設備、食器洗浄機などが含まれます。中古設備やリースを活用することで費用を抑えることも可能です。
【広告宣伝費:20万〜40万円】
開業告知、チラシ作成、ウェブサイト制作などの初期宣伝に必要な費用です。
【資格取得費:3万〜6万円】
食品衛生責任者、防火管理者などの資格取得にかかる費用です。
運転資金
開業後の継続的な運営には、以下のような運転資金が必要になります。
【賃貸料】
売上に対して7〜10%が理想的とされています。地域や立地により大きく変動するため、慎重な物件選びが重要です。
【人件費:20万〜100万円】
店主一人での運営なら最小限に抑えられますが、従業員を雇用する場合は人件費が大きな割合を占めます。
【材料費:25万〜150万円】
カレーの材料は比較的安価ですが、こだわりの食材を使用する場合は費用が増加します。一般的に売上の25〜30%程度が目安です。
【水道光熱費:10万〜30万円】
厨房設備の使用頻度や店舗規模により変動します。
その他経費(広告宣伝費、保険料など):10万〜20万円
経営が安定するまでの3〜6か月分の運転資金を事前に用意しておくことが推奨されています。
カレー屋開業の主な業態
カレー屋の開業には複数の形態があり、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。資金力や経営方針、リスク許容度に応じて最適な開業形態を選択することが重要となります。
個人の店舗
自分自身のコンセプトとこだわりを最大限に反映できる開業形態です。店舗探しから内装、メニュー開発、運営まですべてを自分でコントロールできます。
【メリット】
・完全なオリジナルカレーの提供が可能
・経営方針を自由に決められる
・成功した場合の利益が最大化される
・将来的な多店舗展開も視野に入れられる
【デメリット】
・開業準備から運営まで全て自分で行う必要がある
・初期投資が比較的高額になる
・経営ノウハウの蓄積に時間がかかる
・失敗時のリスクが大きい
【適している人】
カレー作りに絶対的な自信がある方、独自のコンセプトを持つ方、将来的なフランチャイズ展開を考えている方に最適です。
フランチャイズ
既存ブランドに加盟し、確立されたシステムで開業する方法です。
【メリット】
・既に認知されたブランド力を活用できる
・本部から開業・運営サポートを受けられる
・仕入れ先や調理方法が確立されている
・初期投資のリスクを抑えられる
・経営経験がなくても比較的安心して開業できる
【デメリット】
・加盟金や継続的なロイヤリティが発生する
・メニューや運営方針の自由度が低い
・本部の方針変更に左右される
・オリジナリティを出しにくい
【適している人】
経営経験が少ない方、リスクを抑えて開業したい方、既存ブランドのファンの方に向いています。
移動販売(キッチンカー)
キッチンカーを利用してオフィス街やイベント会場などで移動販売を行う形態です。近年、コロナ禍の影響もあり注目を集めています。
【メリット】
・店舗の賃貸料が不要で固定費を大幅に削減できる
・顧客の多い場所を選んで営業できる
・初期投資が店舗型の約1/4程度
・複数のエリアで営業が可能
【デメリット】
・天候に左右されやすい
・営業場所の確保が必要
・仕込み場所を別途確保する必要がある
・営業エリアごとに保健所の許可が必要
【適している人】
初期費用を抑えたい方、複数エリアでの営業を考えている方、まずは小規模から始めたい方におすすめです。
カレー屋の開業に必要な資格・手続き
カレー屋を開業するには、法律で定められた資格の取得と各種手続きが必要です。これらを確実に進めることで、安心してオープンを迎えることができます。
食品衛生責任者
食品衛生法により、営業者は1店舗につき1名以上の食品衛生責任者を選任することが義務付けられています。取得には、各都道府県の食品衛生協会が主催する「食品衛生責任者養成講習会」を受講する必要があります。
なお、すでに栄養士・調理師・製菓衛生師などの資格を持っている場合は、講習会を受けずに申請のみで食品衛生責任者として認められます。
資格を持っている人は、食品衛生協会などへ申請して「食品衛生責任者手帳」を発行してもらいましょう。
出典:一般社団法人東京都食品衛生協会|食品衛生責任者について(https://www.toshoku.or.jp/training/seki-gaiyou.html)
防火管理者
収容人数30名以上の店舗では防火管理者の選任が必要です。火災予防と避難計画の作成、定期的な訓練実施などが主な役割です。取得には、一般財団法人日本防火・防災協会のホームページで講習を申し込み、各都道府県の会場で受講します。
出典:一般財団法人日本防火・防災協会|防火管理講習(https://www.bouka-bousai.jp/hp/lec_info/guide_bouka.html)
飲食店営業許可
飲食店を開業するには、保健所から「飲食店営業許可」を取得する必要があります。これは食品衛生法にもとづき、衛生的で安全な飲食を提供できる店舗であることを確認するための制度です。
【申請の流れ】
1.事前相談:内装・外装工事開始前に図面を持参して保健所に相談
2.営業許可申請:施設完成予定日の約10日前に申請
3.施設の確認検査:保健所職員による実地検査
4.営業許可書の交付:検査に合格後、許可証が発行される
5.営業開始
設備が基準を満たしていない場合は修正が必要になるため、工事前の事前相談が重要です。時間に余裕を持って手続きを進めましょう。
キッチンカーで開業する場合の注意点
キッチンカーでカレーを販売するには、地域の保健所からの営業許可が欠かせません。必要となるのは「キッチンカー本体の営業許可」と「仕込み場所の営業許可」の2種類です。
まず、キッチンカーそのものについては、営業する地域ごとに保健所の営業許可を受けなければなりません。
営業許可を取得するためには、調理設備を整えた車両を保健所に持ち込み、給排水設備の容量やシンクの数と大きさ、食材や器具を清潔に保管できる収納棚、衛生管理の体制などが基準を満たしているかどうかの審査を受けます。
次に、カレーの仕込み場所についても営業許可が必要です。たとえその場で調理を行わなくても、提供する料理の下準備を行う以上、一定の衛生基準を満たした場所で仕込む必要があります。
ただし、この基準は自治体によって異なる場合があるため、事前に営業予定地域の保健所に問い合わせて確認しておくことが大切です。
必須ではないけれど…カレー関連の資格も押さえておこう
カレー屋を開業するにあたって、取得が義務付けられている資格はありません。しかし、ブランディングや顧客とのコミュニケーションに役立つ資格を持っておくことで、店舗の信頼性や話題性を高めることができます。
たとえば、日本野菜ソムリエ協会が認定する「カレーマイスター」は、カレーに関する専門知識を有していることを証明できる資格です。
また、日本カレー機構が認定する「カレーエキスパート」は、カレーの専門家としてのスキルを示す資格であり、取得することで店舗の信頼性向上にもつながります。
こうした資格は必須ではありませんが、「このお店は本格的」「安心して任せられる」といったイメージづくりに役立ち、差別化のポイントとして活用できます。
出典:日本野菜ソムリエ協会「カレーマイスター養成講座」
(http://curry-m.jp/)
出典:日本カレー機構「カレーエキスパート資格」
(http://curry-kiko.jp/curry-expert)
カレー屋開業で成功するためのポイント
カレー屋の開業を成功させるには、競合との差別化と効率的な運営が不可欠です。ここでは、失敗しない経営のための具体的なポイントを解説します。
入念なコンセプト設計を行う
成功の第一歩は、明確なコンセプト設計です。「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを明確にし、それにもとづいて立地を選定することが重要です。
【コンセプト例】
女性向けの健康志向カレー:住宅街やオフィス街
学生向けのボリュームカレー:大学周辺
高級志向のスープカレー:ビジネス街
ターゲット顧客がどこにいるのか、どのような環境を求めているのかを深く分析し、コンセプトと立地を一体的に考えることで成功確率が高まります。
単に「おいしいカレーを作る」だけでなく、独自の価値提案ができるかが競合との分かれ道になります。
トッピングなどで客単価を上げる
カレー屋の構造的課題である客単価の低さを克服するには、魅力的なトッピングメニューの開発が効果的です。
【効果的なトッピング戦略】
・定番トッピング(玉子、チーズ)に加えて限定トッピングを用意
・二種盛り、三種盛りなどのカレー組み合わせメニュー
・季節限定トッピングで話題性を創出
・SNS映えする見た目にこだわったトッピング
【サイドメニューの充実】
・サラダ、スープなどのヘルシーメニュー
・ラッシーやチャイなどのドリンクメニュー
・デザートでの滞在時間延長
これらの工夫により、客単価を向上させることも可能です。
オペレーションを効率化して回転率を高める
カレー屋の最大の強みは「回転率の高さ」です。この武器をさらに生かすためには、日々のオペレーションを効率化し、提供から会計までの流れをスムーズにすることが重要です。
まず、調理オペレーションの改善が欠かせません。たとえば、カレーは大量に仕込みやすいメニューのため、事前準備を徹底すれば提供時間を大幅に短縮できます。
さらに、接客や会計の効率化もポイントです。POSレジの導入やキャッシュレス決済の積極的な利用により、会計の待ち時間を削減できます。食券制を採用すれば、注文と会計を同時に済ませられるため、混雑時のオペレーションもスムーズになります。
そして、スタッフ教育も重要です。効率的な接客動線を共有し、ピークタイムを想定したトレーニングを実施することで、混雑時でも落ち着いたサービス提供が可能になります。
こうした工夫を積み重ねることで、少ない時間で多くの顧客に満足していただける体制を整え、店舗の回転率を最大限に高めることができます。
原価と利益のバランスを常に把握しておく
味へのこだわりと経営の持続性を両立させるには、適切な原価管理が不可欠です。カレー屋の原価率は30%程度が適正とされています。この範囲内で最大限の価値を提供することが重要です。
【原価管理のポイント】
・食材の仕入れ先定期見直し
・無駄な廃棄を減らすための仕込み計画
・メニューごとの原価率把握
・季節による食材価格変動への対応
開業前に知っておきたい!カレー屋のごみ処分ルールと注意点
カレー屋を開業する際に見落としがちですが、非常に重要なのがごみ処理の問題です。飲食店から出るごみは「事業系ごみ」に分類され、家庭ごみとはまったく異なる処理が必要になります。
適切な処理を怠ると法的な問題に発展する可能性もあるため、開業前に必ず理解しておきましょう。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
事業系ごみの種類ごとの処分方法
カレー屋から出る事業系ごみは、大きく「一般廃棄物」と「産業廃棄物」に分類されます。
一般廃棄物
「一般廃棄物収集運搬業許可」を持つ業者に委託するか、自治体の処理施設に自己搬入します。住居と店舗が一体となっている場合でも、事業で発生したごみを家庭ごみ集積所に出すことは不法投棄にあたります。必ず事業系ごみとして適切に処理してください。
・生ごみ(野菜くず、食べ残し、調理残渣)
・紙類(メニュー表、レシート、包装紙)
・段ボール
・厨房から出る一般的な廃棄物など
産業廃棄物
「産業廃棄物収集運搬業許可」を持つ業者に委託する必要があります。この許可は都道府県知事が発行し、廃棄物の品目ごとに許可が必要です。
・廃プラスチック類(食品容器、ラップ、ストロー)
・ガラスくず・陶磁器くず(食器の破損品)
・廃油(調理に使用した油)
・グリストラップ汚泥(排水設備から出る汚泥)
・金属くず(調理器具、缶詰の缶)など
イーブライトでは、Instagramでごみ回収に関する情報を投稿しています。
ごみ回収でお困りの際にはぜひお問い合わせください。
まとめ
カレー屋の開業には多くの魅力がある一方で、しっかりとした準備と戦略が大切です。安定した需要とオリジナリティを生かせるカレー屋ですが、競合の多さや客単価の低さという課題もあります。
これらを克服するには、明確なコンセプト設計、適切な立地選択、効率的なオペレーション、そして魅力的なトッピングによる客単価向上が重要です。
また、見落としがちなのが事業系ごみの適切な処理です。法的な義務を果たし、安心して営業を続けるためには、信頼できる廃棄物処理業者との連携が不可欠です。
イーブライトでは、廃棄物の収集・分別からリサイクル、さらにグリストラップ清掃まで、店舗の衛生環境を守る幅広いサービスを提供しています。環境への負荷を抑えながら、飲食店が安心して営業を続けられるようサポートしています。
廃棄物に関してお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。