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アスベストはどう処理される?種類・危険性・方法までわかりやすく解説

アスベストは、かつて建材や自動車部品などに広く使用されていました。しかし、人体に悪影響があることが明らかになったことから、現在は使用が禁止されています。
ただし、規制前に使用されたアスベストは依然として多くの場所に残っており、適切な取り扱いが必要です。アスベストは、種類や粉じん性により危険性が異なるため、処理には正しい知識と対応が求められます。
この記事では、アスベストの種類やその危険性、安全な処理方法を解説します。
アスベストとは?
アスベストは、細い繊維状をした天然鉱物で、酸やアルカリに強く、可燃性や絶縁性にも優れています。比較的安価で加工しやすかったことから、かつては建材や自動車部品など、さまざまな製品に幅広く使われてきました。
しかし、のちにアスベストが深刻な健康被害を引き起こすことが判明し、現在ではアスベストを含む製品の製造は禁止されています。一度吸い込んだアスベスト繊維は肺に長くとどまり、時間が経ってから、悪性中皮腫や肺がんといった重大な疾患を引き起こす可能性があるためです。
現在でも規制前に建てられた建物や工作物には、アスベストを含む資材が使われているケースが多く見られます。資材を処分する際には、法令に基づいた適正な処理が必要です。
アスベストの種類
アスベストは大きく分けて「蛇紋石(じゃもんせき)族」と「角閃石(かくせんせき)族」の2つがあります。
分類 | 名称 | 特徴 |
蛇紋石族 | クリソタイル(白石綿) | 全体の約9割と日本で最も多く使用されている。発がん性はほかのアスベストに比べ低いが、有害であることにかわりはない。 |
角閃石族 | アモサイト(茶石綿) | 南アフリカに大きな鉱山がある。繊維が細く、吸い込みやすい。吹付け石綿や断熱材に使用されてきた。発がん性が高い。 |
クロシドライト(青石綿) | 繊維が鋭く、肺に刺さりやすい。発がん性が非常に高い。吹付け石綿、水道管(高圧管)、断熱材に使用されてきた。 | |
アンソフィライト石綿 | 他鉱物と一緒に混ざっていることが多い。熊本県にも鉱山があった。 | |
トレモライト石綿 | 他鉱物と一緒に混ざっていることが多い。吹付け石綿に混入している場合もある。 | |
アクチノライト石綿 | 他鉱物と一緒に混ざっていることが多い。 |
飛散性・非飛散性
アスベストは、そこにあるだけでただちに危険というわけではありません。問題になるのは、アスベストの繊維が空気中に飛び散り、それを人が吸い込むことです。アスベストは飛散性と非飛散性に分類され、それぞれ健康リスクや処理方法が異なります。
・飛散性アスベスト
空気中に飛散しやすい性質を持つアスベストです。たとえば、吹付け材や劣化した保温材などが該当します。健康リスクへの影響が大きく、特別管理産業廃棄物として、通常よりも厳格なルールに従って管理・処分する必要があります。
特別管理産業廃棄物とは、人の健康や生活環境に深刻な影響を与えるおそれのある廃棄物です。
・非飛散性アスベスト
通常の状態では空気中に繊維が飛びにくく、粉砕や切断などをしなければ大きな危険はありません。たとえば、スレート材やアスベストを含む成形建材が該当します。こちらは産業廃棄物として、適正に処理すれば問題ありません。
アスベストのレベル
アスベストは、空気中への飛散のしやすさ(発じん性)に応じて「レベル1〜3」に分類されます。数字が小さいほど飛びやすく、健康リスクも高くなります。
・レベル1(吹き付け材など)
例:耐火建築物の梁や柱、ボイラー室の天井・壁
最も飛散しやすく、厳重な処理と管理が必要です。一般住宅で使用されることはまれです。
・レベル2(保温材・断熱材など)
例:空調ダクト、ボイラー本体や配管に巻き付けられた材料
レベル1ほどではありませんが、飛散リスクは高くなっています。こちらも厳重な処理と管理が必要です。
・レベル3(屋根材・外壁材など)
例:建物の天井材、床材
比較的飛散しにくいとされていますが、破損すると粉じんが発生するおそれがあります。2022年の法改正により、レベル3のアスベスト建材でも適切な処理が義務化されました。
アスベスト繊維は非常に細かく軽いため、作業中に簡単に空気中に飛散します。とくに吹付け石綿のように露出した状態では、わずかな振動や衝撃でも粉じんが発生しやすくなります。
飛散性アスベストの処理方法
アスベストは2012年に製造・使用が全面禁止されましたが、それ以前に使われた建材や設備はいまでも多くの現場に残っています。とくに飛散性アスベストを扱う際は、特別管理産業廃棄物として、法律に定められたルールに従い、厳重に処理しなければなりません。
処理は専門の業者に委託するケースが多いものの、処分業者に任せきりではいけません。排出事業者には、処理の流れを理解し、業者が適切に作業しているかを確認・管理する責任があります。
適正な処理ができていないと、後になって排出事業者自身が責任を問われることもあるため、注意が必要です。以下に、飛散性アスベストの処理の流れを紹介します。
収集・運搬
飛散性アスベストは非常に細かい繊維を含んでおり、運搬中にアスベスト繊維が飛び散る危険性があります。そのため、飛散防止のための取り扱いルールが法律で定められています。
・アスベスト廃棄物はほかの廃棄物と混ぜず、単独で収集・運搬する
・破砕を避け、形を崩さないよう注意する
・プラスチック袋を使用する場合は、破れ防止のためシートなどで包み、外側を保護する
・容器(コンテナ)に積む際は、運搬中に廃棄物が転倒・移動しないように固定する
・アスベストの飛散や流出を防ぎ、作業員や周囲への健康被害・環境被害が起こらないよう細心の注意を払う
万が一、袋や容器が破損した場合の対応も定められています。
・すぐに散水して粉じんを抑え、アスベストの飛散を防ぐ
・破損した袋は二重のプラスチック袋や耐水性の素材で再包装する
・事故や破損が発生した際は、速やかに排出事業者に報告する
これらのルールを守ることで、アスベストの安全な取り扱いと、健康・環境リスク防止が可能になります。
出典:環境省「石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)」(https://www.env.go.jp/content/900534247.pdf)
中間処理
飛散性アスベストの中間処理は、基本的に次の2つの方法での処理が求められます。
・高温で溶かして無害化する(溶融処理)
・薬剤などを使ってアスベストの害を除去する(無害化処理)
ただし、例外として、特別管理産業廃棄物としてそのまま埋め立てる場合には、溶融処理や無害化処理の必要はないとされています。溶融処理は、アスベストを1,500℃以上の高温で加熱して完全に溶かすことで、繊維状の構造を破壊し、飛散性や発がん性をなくすことが可能です。
出典:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」(https://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/04.html)
最終処分
アスベストの最終処分は、専用の処分場での埋め立てによって行われます。埋め立てる際は、以下の点に注意が必要です。
・処分場は、都道府県知事または政令市の市長から許可を受けた施設であること
・廃棄物は、薬剤で安定化・固定化し、飛散しないよう処理したうえで、耐水性のある袋に二重包装して埋めること
・処分場内の決められた場所にまとめて埋めること
・外部へ漏れ出さないよう、埋めた後は上から土をかぶせること
これらの手順を守ることで、アスベストの飛散や周囲の環境への影響を防げます。
出典:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」(https://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/04.html)
非飛散性アスベストの処理方法
非飛散性アスベストは、通常の状態では空気中に飛び散るおそれが少ないため、特別管理産業廃棄物には該当しません。産業廃棄物である「石綿含有廃棄物」として産業廃棄物に分類され、人や環境への影響を避けるために、適切な処理が求められます。
以下では、非飛散性アスベストの処理方法を紹介します。
収集・運搬
非飛散性アスベストは「特別管理産業廃棄物」には該当しませんが、収集・運搬中に破損するとアスベストが空気中に漏れるリスクがあるため、慎重な取り扱いが必要です。
収集・運搬時の基本ルールは以下のとおりです。
・ほかの廃棄物と混ぜず、単独で収集・運搬する
・破砕や押しつぶしを避け、アスベストが損傷しないよう注意する
・飛散や漏出を防ぐため、適切な飛散防止策を講じる
さらに、飛散防止のための具体的な対応も定められています。
・廃棄物は、もとの形のまま丁寧に積み込み、運搬時の飛散を防止する
・シートで覆う、または専用のフレキシブルコンテナに入れて運搬すること
・パッカー車やプレス式の圧縮車両での収集は避ける(アスベストが飛散する原因になるため)
・表面にアスベストを含む塗装材やけい酸カルシウム板第1種など、表面にアスベストを含むものは破損しやすいため、二重包装し、強度のある袋やコンテナに入れて搬送する
非飛散性でも、破損すれば飛散リスクがあるため、慎重な対応が求められます。
出典:環境省「石綿含有廃棄物等処理マニュアル(第3版)」(https://www.env.go.jp/content/900534247.pdf)
中間処理
非飛散性アスベストであっても、人体や環境に有害な物質であることに変わりはありません。最終処分として埋め立てる前に、必ず無害化や焼却などの中間処理をする必要があります。
家庭から排出されるアスベストを含む廃棄物については、以下のいずれかの方法で処理されます。
・溶融処理:アスベストを高温で溶かして完全に無害化する
・無害化処理:薬品などを使ってアスベストを安全な物質に変える
・破砕して焼却:細かく砕き、焼却して処理する
一方、工場や建設現場など事業系から排出されるアスベストを含む廃棄物の処理方法は、溶融処理または無害化処理のいずれかに限られます。破砕して焼却する方法は、飛散リスクが高いため、使用できません。
出典:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」(https://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/04.html)
最終処分
非飛散性アスベストは「安定型最終処分場」と呼ばれる専用施設に埋め立てることで処分できます。ただし、処分する際には、アスベスト以外の廃棄物が混ざっていないことが条件です。ほかの廃棄物が混じっていると、最終処分場で受け入れてもらえません。
埋め立て時の注意点は次のとおりです。
・埋め立てる場所は、都道府県などの許可を受けた最終処分場で行う
・廃棄物は処分場内の指定された区画にまとめて埋める
・アスベストの飛散や流出を防ぐため、土で覆うなどの対策を講じる
これらのルールを守ることで、アスベストが周囲の環境に悪影響を与えるリスクを低減できます。
出典:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」(https://www.env.go.jp/recycle/waste/sp_contr/04.html)
まとめ
アスベストを吸い込むと、肺に長期間とどまり、何十年も後に悪性中皮腫や肺がんなどの重大な病気を引き起こすことがあります。現在、アスベストを含む製品の製造や使用は法律で禁じられていますが、規制前に建てられた建物には、今なおアスベストが含まれているケースが少なくありません。
作業員だけでなく、周囲の人々の健康を守るためにも、飛散防止措置と安全管理を徹底しましょう。
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