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廃棄物処理法違反をした際の罰則は?具体的な事例やポイントを解説
廃棄物処理法に違反すると、厳しい罰則が科せられる可能性があります。実際、適切な知識や管理が不足していたことが原因で、意図せず法律違反に至るケースも少なくありません。
法律違反を犯すと、行政処分を受けて事業活動に支障をきたしたり、マスメディアに取り上げられて会社のイメージが悪化したりする恐れがあります。 この記事では、廃棄物処理法違反した場合の罰則を解説しています。具体的な事例や廃棄物の分類方法について紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
廃棄物処理法違反をした際の罰則は?
罰則を確認することで、どのような行為が違法となるのかを理解し、法令違反を未然に防げます。ここでは、廃棄物処理法違反をした場合の具体的な罰則を紹介します。
廃棄物処理法違反した際の主な罰則
廃棄物処理法に違反すると、環境保護や公共の安全を損なう行為とみなされ、以下の罰則が科せられることがあります。環境省の「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)を参考に詳しく解説します。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
違反内容 | 罰則 | 対象者/注意点 |
---|---|---|
廃棄物の無許可焼却・投棄 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、または両方(法人の場合、3億円以下の罰金) | 未遂であっても適用される |
廃棄物の運搬や処理を無許可業者へ委託した場合 | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金、または両方 | |
改善命令への違反 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金、または両方 | 対象者:排出事業者、廃棄物の収集運搬業者、処分業者 |
管理票(マニフェスト)違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | 対象:管理票なしで廃棄物を処理した場合、または委託していないのに管理票を交付した場合 |
特別管理産業廃棄物の管理責任者不設置 | 法律で定められた資格を有するものを置かなかった場合、30万円以下の罰金 | 対象:特別管理産業廃棄物が発生する事業所を持つ事業者 |
廃棄物の種類と必要な許可
廃棄物は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2つに分けられ、それぞれに必要な許可が異なります。これらを運搬するには「産業廃棄物収集運搬業許可」、処分するには「産業廃棄物処分業許可」が必要です。
一方、一般廃棄物を運搬・処分するには「一般廃棄物処理業許可」が必要です。
廃棄物処理法違反の事例は?
廃棄物処理法は非常に難解な法律です。具体的にどのような行為が法律違反に該当するのか、正確に理解できていない方も少なくありません。 ここでは、廃棄物処理法違反に該当する具体的な事例を紹介します。
無償での引き取り
ひとつ目は、不要物を回収業者などに無償で引き取ってもらった事例です。
廃棄物処理法で「不要になったものが自分で使用できない、または他人に売却できない状態になったとき、それを廃棄物とみなす」とされています。そのため、不要なゴミを業者に無償で引き取ってもらう場合、そのゴミは法律上「廃棄物」として扱われます。
重要なのは、廃棄物が適切に処理されるかどうかを確認することです。責任はゴミを出した側(排出者)にあるため、無償で引き取られたゴミが法律にもとづかない方法で処分された場合、廃棄物処理法違反とみなされる可能性があります。
たとえば、不法投棄が行われた場合、排出者も責任を問われることがあるため、注意が必要です。
形式的な有価物
形式的に「有価物」として取引された場合でも、その取引が実質的に利益を生まない場合、廃棄物に該当することがあります。
有価物とは、金銭的価値があり、売却することで収益を得られるものです。しかし、売却価格よりも運送費や処理費用などの経費が高ければ、実質的には収益が発生しないため、その物は「廃棄物」として扱われます。
具体例を挙げると、不要になった物を自ら自動車で運搬し(燃料費100円)、業者に1円で買い取ってもらった場合、排出事業者に収入がないため、取引された物は「廃棄物」として扱われる可能性があります。
廃棄物と見なされるかどうかは、売却価格と売却にかかる経費(運送費や処理費用など)を比較した結果、収益があるかどうかで判断されます。
専ら物
専ら物とは、再生可能な資源として回収業者に引き渡す古紙、くず鉄、古繊維などのゴミのことです。しかし、これらの物を無償で回収してもらう場合、法律上では「廃棄物」とみなされるため、注意が必要です。
たとえば、古紙やくず鉄を回収業者に引き渡す時点で、それらはすでに不要なものとされます。不要なものは廃棄物に該当し、最終的に資源として再利用されても、元々は廃棄物であったことには変わりありません。
しかし、専ら物を扱う場合は、通常の廃棄物処理業とは異なり、廃棄物処理業の許可は不要です。再生資源としての取引が前提であるため、マニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付義務も免除されています。
ほかの廃棄物よりも扱いは厳格ではありませんが、それ以外の義務は適用されるため、専ら物を業者に委託する際は書面による契約を結ばなければなりません。
資源化・再利用
ゴミを資源化または再利用できる物質に変えたとしても、不要物を無償で引き渡したものは廃棄物です。たとえば、建設工事で伐採した木くずを堆肥として再利用するために、堆肥製造業者が無料で引き取った場合を考えてみましょう。
この木くずは無償で引き渡されたため、廃棄物として扱われます。たとえ堆肥製造業者が木くずを再利用して堆肥に加工したとしても、不要なものを別の形で活用しているだけであり、廃棄物である事実は変わりません。廃棄物処理法にもとづく適切な手続きや管理が必要となります。
下取り行為
下取り行為とは、新しい商品を購入する際に、古い商品を引き取ってもらい、その分の価値を購入価格から差し引く取引です。商品を無償で引き取ってもらう場合は、廃棄物の収集運搬の許可は不要です。
しかし、引き取り費用を「下取り費用」として支払っている場合は、その費用が実質的に廃棄物の収集や運搬の費用とみなされる可能性があります。この場合、業者が廃棄物を運搬する行為は法律上「廃棄物の収集運搬」に該当する場合があり、適切な許可が必要です。
廃棄物の量
廃棄物は、量の多少にかかわらず廃棄物として適切に扱う必要があります。たとえ少量とはいえ、不法投棄や無許可の焼却は厳しく禁止されています。 とくに産業廃棄物は、環境やひとの健康に悪影響を及ぼす可能性のある有害物質を含む場合があるため、たとえ少量であっても慎重な管理が求められます。
少量の廃棄物でも不適切な処理が行われなければ、土壌汚染や水質汚濁といった深刻な環境問題を引き起こすリスクがあるためです。量が少ないからといって安易に処理することは避け、法令を遵守しましょう。
廃棄物の種類は?
ここでは、廃棄物の種類についてくわしく解説します。
産業廃棄物
産業廃棄物とは、製造業や建設業、医療業など特定の産業で排出されるごみのことです。産業廃棄物は現在20種類に分類されており、その特性上有害物質を含んでいるものが多いため、処分方法まで細かく決められています。
産業廃棄物の種類と具体例の一覧は、以下のとおりです。
種類 | 具体例 |
---|---|
廃プラスチック類 | 合成樹脂くずや合成繊維くず、合成ゴムくずなど |
ゴムくず | 生ゴム、天然ゴムくず |
金属くず | 鋼鉄および非鉄金属の破片や研磨くず、掘削くずなど |
ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず | ガラス類やレンガくず、セメントくずなど |
がれき類 | コンクリート破片やアスファルト破片など |
燃え殻 | 石炭がらや焼却炉の残灰、炉清掃掃出物など |
汚泥 | 排水処理および各種製造業生産工程で排出された泥状のものや洗車場汚泥など |
廃油 | 鉱物性油や動植物性油、潤滑油など |
廃酸 | 廃硫酸や廃塩酸、写真定着廃液など |
廃アルカリ | 廃ソーダ液や金属せっけん、写真現像廃液など |
鉱さい | 鉱物廃砂や不良石炭、電気炉等溶解炉かすなど |
ばいじん | バグフィルター捕集ダストや集じん器捕集ダスト、煙道および煙突に付着堆積したススなど |
紙くず | パルプ製造業や製紙業などから生じた紙くず |
木くず | 建設業や木材および木製品製造業などから生じた木材片やおがくずなど |
繊維くず | 木綿くずや羊毛くずなど |
動植物性残さ | あめかすやのりかす、醸造かすなど |
動物の糞尿 | 畜産農業から排出される家畜の糞尿 |
動物の死体 | 畜産農業から排出される家畜の死体 |
動物系固形不要物 | と畜場において処分した獣畜をはじめとする固形状の不要物 |
13号廃棄物 | これまで取り上げてきた産業廃棄物の分類に該当しないもの |
特別管理産業廃棄物
産業廃棄物のなかでもとくに有害な物質(爆発性、毒性、感染性)を含むものは「特別管理産業廃棄物」として扱われます。取り扱いを間違えると、健康や生活環境に深刻な被害を与える可能性が高いため、以下の種類はより厳しい管理が求められます。
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 感染性産業廃棄物
- 特定有害産業廃棄物(廃PCBやPCB処理物など)
一般廃棄物
一般廃棄物とは、日常生活を送る際に発生するごみのことです。一般廃棄物は「家庭廃棄物」「事業系一般廃棄物」の2種類に分類されます。前者は家庭から排出されるごみ、そして後者は事業者から排出されるごみの呼称です。
以下は、一般廃棄物の種類と具体例の一覧になります。
区分 | 種類 | 具体例 |
---|---|---|
家庭廃棄物 | ||
可燃ごみ | 生ごみや衣類、庭木の剪定で発生した木くずなど | |
不燃ごみ | 食器やガラス、陶磁器、プラスチックなど | |
粗大ごみ | 家電4品目を除く家電やソファーをはじめとする大型家具類 | |
家電4品目 | テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機 | |
自転車 | 自転車 | |
パソコン | パソコンおよび周辺機器 | |
有害ごみ | 乾電池や蛍光灯などの有害物質を含むもの | |
事業系一般廃棄物 | ||
可燃ごみ | 生ごみや紙くず、木くずなど | |
粗大ごみ | デスクや棚など | |
し尿 | ||
し尿 | 汲み取りのし尿(排泄の際に使用したトイレットペーパーや綿類含む) | |
浄化槽の汚泥 | 浄化槽方式のうち樽に付着した汚泥 |
特別管理一般廃棄物
特別管理一般廃棄物とは、一般廃棄物のなかでもとくに危険性や有害性が高く、適切な処理や管理が必要とされる廃棄物です。通常の一般廃棄物より厳しいルールで扱われます。
特別管理一般廃棄物に該当するのは、以下のとおりです。
- PCBを含むもの
- 廃水銀を含むもの
- ばいじん
- 燃え殻、汚泥、ばいじん(ダイオキシン類の含有量が多いもの)
- 感染性一般廃棄物(医療施設や介護現場などから排出される感染症を引き起こす可能性がある廃棄物)
廃棄物かどうかの判断基準は?
廃棄物が廃棄物に該当するかどうかの判断は、複雑で難しい場合があります。実際、廃棄物を分別する際に、その扱いに迷うことも少なくありません。ここでは、廃棄物に該当するかを判定するための基準として「客観説」と「総合判断説」の2つを解説します。
客観説
廃棄物処理法が公布された昭和45年当初、廃棄物の定義は非常にシンプルで「客観的に見て不要な汚物または不要物」という基準でした。この基準では、廃棄物に該当するかどうかはものの状態や所有者の意向に関係なく、ものが不要であると認識されるかどうかだけで判断されていました。
その結果、不要なものはすべて廃棄物として処理されることになりますが、この基準にはいくつかの問題があります。たとえば、貴金属を含む汚泥やリサイクル可能な資源も廃棄物として扱われる場合があり、リサイクルの妨げになるケースが出てきたのです。
これらの問題を解消するため、後により柔軟で実情に合った基準である「総合判断説」が導入されることになりました。
総合判断説
「総合判断説」は、客観説に代わる基準として導入されました。これは、ある物が廃棄物処理法上の「廃棄物」に該当するかを判断する際に、単一の基準ではなく、複数の視点を総合的に組み合わせて判断する考え方です。
この基準は、過去の裁判で議論され、廃棄物の定義に関する課題に対応するために確立されました。現在では、廃棄物であるかどうかを判断する際、以下のような要素が考慮されます。
- ものの性状: そのものがまだ使用可能で、環境や健康に悪影響を与えない状態であるか
- 排出状況: 計画的に排出され、適切な場所で保管されているか
- 通常取扱い形態: 一般的に製品としての価値が認められ、廃棄物として扱われていないか
- 取引価値の有無: 代金をともなう取引が行われ、他者から見ても利益を生む価値があるか
- 占有者の意思: そのものを利用するまたは販売する意図があり、放置や処分する意思がないか
これらの要素を総合的に考慮して判断するため、単一の基準で判断することは避けるべきとされています。
廃棄物処理法違反を防ぐポイントは?
廃棄物処理法に違反すると、法的な罰則だけでなく、企業の信頼性や評判にも深刻な影響を与える可能性があります。ここでは、廃棄物処理法違反を防ぐための具体的なポイントについて解説します。
適切な委託先を選ぶ
廃棄物処理を委託する際は、信頼できる業者を選ぶことが非常に重要です。無許可業者に廃棄物を渡すと、不法投棄や不適切な処理が行われる可能性があり、その結果として排出者にも責任が問われることがあります。
適切な委託先を選ぶためには、業者が所持する許可証や契約書を確認し、その施設や事務所もチェックすることが大切です。また、業者の過去に違反歴がないか、業界内での評判を調べることも重要なポイントです。
これらの確認を行うことで、廃棄物が不法に処理されるリスクを最小限に抑えられます。
最新の法令改正情報を入手する
廃棄物処理法はこれまでに何度も改正されており、そのたびに新しいルールが適用されています。また、廃棄物処理に関する法律は国のものだけでなく、各自治体による独自の条例も存在します。そのため、最新の法令や自治体の規定を定期的に確認することが重要です。
「法令改正を知らなかった」という言い訳は通用しません。常に最新の情報を把握し、適切な対応を取ることで、法令遵守を確実にし、リスクを回避できます。廃棄物処理を行う企業や事業者は、定期的な法令のチェックを怠らないようにしましょう。
従業員にも周知させる
近年、不適正処理や不法投棄に関する問題が報告されています。このようなケースでは、廃棄物を排出した企業が知らないうちに法律違反に関与していることがあります。廃棄物処理に関する問題が発覚すると、企業の社会的信用に大きなダメージを与える可能性があります。
そのため、従業員には廃棄物処理に関する知識を深めてもらう機会を提供することが重要です。
従業員に周知させることで、適切な管理体制を構築し、企業のリスクを低減できます。廃棄物処理は「渡したら終わり」ではなく、出した廃棄物が最終的にどのように処理されるのかについても責任を持つ意識が求められます。
過去の違反事例を確認する
過去の違反事例を確認することで、どのような行為が廃棄物処理法に抵触するかを具体的に理解できます。この法律は解釈が分かれる部分も多いため、知らずに違反しないよう、過去の事例を徹底的に確認することが非常に重要です。
まとめ
廃棄物処理法に違反すると、懲役刑や罰金などの厳しい罰則が科せられます。少量の廃棄物であっても、未遂に終わった場合でも、不適切な処理は厳格に取り締まられます。
廃棄物とは「自分で使用できず、他人に売却できない状態にある不要物」です。しかし、廃棄物であるかどうかを正確に判断するのは容易ではありません。廃棄物に該当するか迷った際には、専門家に相談することが大切です。
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