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正しい廃棄物管理とは?基礎知識と責任範囲をわかりやすく解説

事業を進めるにあたって、さまざまなごみを排出します。そのなかには「産業廃棄物」と呼ばれるものが含まれます。産業廃棄物を一般のごみとして処理すると、罰則を受ける可能性があるため、注意が必要です。
こうした問題を避けるためには、廃棄物管理に関する知識を深めることが重要です。本記事では、廃棄物管理の基本的な知識や、廃棄物管理責任者と特別産業廃棄物管理責任者の役割について解説します。
また、管理に必要な書類や事業者の責任範囲についても詳しく解説するため、廃棄物の適切な処理方法について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
廃棄物管理の基礎知識
廃棄物管理とは、自社から排出される廃棄物の区分や種類を把握し、法律にしたがって適切に処理が完了するまでの業務を管理することです。
廃棄物とは、自分で利用したり他人に有償で売却できなくなったりした不要物のことを指します。家庭から出る生活ごみや、事業活動にともなって発生する廃材、汚泥、廃油などが含まれます。
廃棄物は「一般廃棄物」と「産業廃棄物」の2種類に分けられ、それぞれ排出される条件や用途に応じて異なる処理方法が求められます。適切な管理を行うためには、廃棄物の種類を正確に把握し、それに合った処理方法を理解することが非常に重要です。
また、産業廃棄物については、法律で厳格なルールが定められており、排出事業者にはその適正処理の責任が課せられています。
ここからは、廃棄物処理法と廃棄物の種類について解説します。
廃棄物処理法
廃棄物処理法は、正式には「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」と呼ばれ、廃棄物の適切な処理と環境保全を目的とした法制度です。事業活動や家庭から排出される廃棄物の管理基準を定め、適正な処理が行われるように規定しています。
法律では、以下について細かく記されています。
- 廃棄物の定義
- 収集・運搬・処理の方法
- 保管基準
- 責任の所在
- 違反時の罰則
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
とくに、事業活動にともなって発生する産業廃棄物は、排出事業者が適切な処理を行う責任を負っています。無許可の業者に処理を委託したり、不適切な方法で処理したりすると、法律違反となるため、十分に注意する必要があります。
適切に処理するためには、産業廃棄物の種類を正確に把握し、許可を受けた処理業者に委託することが求められます。
廃棄物の種類
廃棄物は「産業廃棄物」と「一般廃棄物」に分類され、それぞれに異なる処理方法や責任の所在があります。適切に管理するためには、各種類の特性を理解することが大切です。
産業廃棄物とは、事業活動によって発生する廃棄物のうち、法令で定められた20種類の廃棄物を指します。
代表的なものには、石炭の残りかすや焼却炉の灰などの「燃えがら」鉱物性や動植物性の油類である「廃油」鉄鋼や非鉄金属の破片や研磨くずなどの「金属くず」があります。
さらに、産業廃棄物のなかでも、爆発性や毒性を持ち、人々の安全に危険をもたらすものは「特別管理産業廃棄物」と呼ばれ、取り扱いには特別な注意が必要です。
産業廃棄物には量に関する基準は設けられていないため、排出量が非常に少ない場合でも、産業廃棄物として認識されます。たとえば、個人事業主など事業規模が小さく、排出する廃棄物が極めて少量であっても、産業廃棄物として適切に処理・対応しなければなりません。
一方、一般廃棄物とは、産業廃棄物に該当しない廃棄物が該当します。一般廃棄物は、事業活動によって発生する「事業系一般廃棄物」、一般家庭の日常生活から生じる「家庭系一般廃棄物」、そして爆発性や毒性を持つ「特別管理一般廃棄物」の3つに分類されます。
事業活動から排出される場合、産業廃棄物として扱われるか一般廃棄物に該当するかは、品目だけでなく排出元の業種によって異なるため、慎重な判断が求められます。
家庭ごみと事業系の廃棄物の処理責任の違い
廃棄物は発生源によって処理の責任が異なり、家庭ごみと事業系廃棄物では適用されるルールも変わります。
家庭から出る一般廃棄物は、市区町村が収集・処理を行うため、住民は自治体の定めたルールにしたがって適切に排出する必要があります。一方、企業や店舗などから発生する事業系廃棄物は、排出者自身が責任を持って処理を行わなければなりません。
とくに、産業廃棄物に該当するものについては、無許可業者に処理を委託したり、不適切に処理したりすると法令違反となり、罰則を受ける可能性があります。したがって、許可を受けた適正な処理業者に委託し、廃棄物の流れを管理することが重要です。
事業活動にともなう廃棄物を適正に管理することは、環境保全に貢献するだけでなく、法的なトラブルを回避するためにも欠かせません。事業者はその責任を自覚し、ルールに従った処理を徹底する必要があります。
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廃棄物管理責任者と特別産業廃棄物管理責任者
廃棄物を管理する人には「廃棄物管理責任者」と「特別産業廃棄物管理責任者」の2つがあります。ここでは、それぞれのもとになっている法律に加えて、なるために必要な条件や資格について解説します。
廃棄物管理責任者
廃棄物管理責任者は、事業所や施設から排出される廃棄物の適正な管理を担当する役職です。この役職は、各自治体の条例によって設置基準が定められており、大規模な事業所においては選任が義務付けられています。
たとえば、北海道札幌市では、延床面積が1,000㎡以上の事業系建築物の所有者に対して廃棄物管理責任者の設置を求めています。また、責任者が変更になった場合も、新たに設置手続きを行う必要があります。
出典:北海道札幌市 事業系廃棄物管理責任者の選任(変更)の届出(大規模建築物)(https://www3.city.sapporo.jp/download/shinsei/search/procedure_view.asp?ProcID=83)
なお、廃棄物管理責任者の役職に就くために特別な資格は必要ありません。ただし、事業所内で廃棄物管理に関する十分な知識を持ち、廃棄物の排出状況を常に把握できる人材が適任とされています。
事業者は廃棄物を適切に管理するため、責任者の役割をしっかりと理解し、法律や自治体の定めるルールにしたがって業務を遂行することが求められます。
特別産業廃棄物管理責任者
特別産業廃棄物管理責任者は、特別管理産業廃棄物を排出する事業場で、適切な処理を監督する役割を担う責任者です。特別管理産業廃棄物とは、感染性廃棄物や有害物質を含む廃棄物など、環境や人体に悪影響を及ぼす可能性があるものを指します。
特別産業廃棄物管理責任者の設置要件は、廃棄物処理法第12条の2第8項に規定されており、特別管理産業廃棄物を排出するすべての事業場に適用されます。この役職には一定の専門知識が求められ、そのため講習の受講および修了試験の合格が必要です。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
また、特別管理産業廃棄物の取り扱いには厳格な基準が設けられており、違反が発覚した場合は行政指導や罰則の対象となる可能性があります。責任者は関連する法律や規則を正しく理解し、適切な管理体制を整える必要があります。
そのため、事業者は特別産業廃棄物管理責任者を適切に選任し、必要な教育を実施することが欠かせません。
廃棄物管理に関する書類
廃棄物管理に関連のある書類は、以下の3つです。
- 産業廃棄物処理委託契約書
- 産業廃棄物管理票(産業廃棄物マニフェスト)
- 産業廃棄物管理票交付等状況報告書
ここでは、それぞれの書類について解説します。
産業廃棄物処理委託契約書
産業廃棄物処理委託契約書とは、事業者が排出した産業廃棄物の運搬や処理を外部の業者に依頼する際に交わす書類です。契約書に記載されている主な項目は、以下のとおりです。
- 廃棄物の種類や数量
- 収集運搬の方法
- 最終的な処理方法
委託を受けた業者は、契約内容にもとづいて適切に廃棄物を取り扱う義務を負います。未締結のまま処理を委託した場合、排出事業者が法律違反として罰則を受ける可能性があるため、注意が必要です。
また、無許可業者との契約や契約内容の不備によって不適切な処理が行われた場合も、排出事業者が責任を問われることになるため、契約内容の確認は慎重に行わなければなりません。契約の締結前には、委託先業者の許可状況や処理能力を確認しましょう。
産業廃棄物管理票(産業廃棄物マニフェスト)
産業廃棄物管理票とは、産業廃棄物の収集・運搬・処理の過程を管理し、適正処理を確保するための伝票です。排出事業者は、産業廃棄物を処理業者へ引き渡す際に管理票を交付し、処理の流れを把握します。
産業廃棄物管理票には、廃棄物の種類や排出量、運搬業者および処分業者の情報などが記載されています。また、廃棄物の適切な処理が完了するまで追跡することも可能です。
さらに、より効率的な運用を実現する目的で、電子マニフェスト制度も導入されています。紙と電子のどちらを利用しても基本的な運用ルールは変わりませんが、電子マニフェストには行政への報告負担が軽減されるなどの利点があります。
産業廃棄物管理を正しく行うためには、排出事業者が産業廃棄物管理票を活用し、処理の進捗を確認することが大切です。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書
産業廃棄物管理票交付等状況報告書とは、排出事業者が産業廃棄物マニフェストの交付状況を自治体に報告するための書類です。排出事業者は、年間のマニフェスト使用状況を記録し、自治体へ提出する義務があります。
報告対象となるのは、前年度(4月1日〜3月31日)の1年間に交付したマニフェストで、毎年6月30日までに提出しなければなりません。提出を怠った場合や虚偽の報告を行った場合は、行政指導や罰則の対象となる可能性があります。
産業廃棄物管理票交付等状況報告書を通じて、産業廃棄物の適正な処理が実施されているかが確認され、不法投棄や不適切な処理の防止につながります。法令遵守の観点からも、事業者はマニフェストの交付状況をきちんと把握し、期限内の提出を徹底することが重要です。
排出事業者の責任範囲
排出事業者の責任範囲は、以下のとおりです。
- 事業所内での適正な保管
- 産業廃棄物処理業許可書の確認
- 処理状況の確認
ここでは、それぞれ解説します。
事業所内での適正な保管
事業者が排出する産業廃棄物は、適切な処理が完了するまで、定められた保管基準に従い管理する必要があります。適正な保管を怠ると、周囲の環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重な対応が欠かせません。
産業廃棄物の保管場所には、飛散や流出を防ぐための囲いを設けることが義務付けられています。また、視認性を確保するために、60cm×60cm以上の掲示板を設置し、産業廃棄物を保管していることを明示しなければなりません。
保管の際は廃棄物の種類に応じた適切な高さを守り、地下への浸透を防ぐ措置を講じることが大切です。
産業廃棄物処理業許可書の確認
産業廃棄物を適正に処理するためには、許可を受けた業者に委託することが法律で義務付けられています。その証明として、産業廃棄物処分業許可証が発行されており、許可を持たない業者への委託は違法となります。
したがって、排出事業者が業務を委託する際には、許可証の内容を慎重に確認することが重要です。とくに、有効期限の確認は欠かせません。
期限が切れた業者への委託は法律違反となり、排出事業者も罰則の対象となる可能性があります。また、許可証には処分可能な廃棄物の種類が明記されているため、委託する廃棄物が適切に処理されるかどうかも事前に確認しなければなりません。
さらに、複数の自治体をまたいで運搬する場合、それぞれの自治体で許可を取得しているかを確認する必要があります。加えて、許可証の偽造が行われるケースもあるため、許可番号や有効期間、認定条件などを十分に精査しましょう。
処理状況の確認
産業廃棄物の処理を外部業者に委託した場合でも、排出事業者は処理状況を適切に把握する責任を負います。委託後の処理が適正に行われているかを確認するため、排出事業者は産業廃棄物管理票を交付し、廃棄物の流れを追跡しなければなりません。
また、廃棄物処理法では、単にマニフェストを交付するだけでなく、処理の全過程を把握し、最終処分まで適正に行われているかを確認する義務が課されています。確認方法は、委託先の処理施設を訪問し、現場での処理状況を直接確認するなどが挙げられます。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
さらに、処理業者が提供する報告書や公式Webサイトの情報を活用し、間接的に状況を把握することも有効です。適正な処理状況を確認することで、法令違反を防ぐとともに、環境保全への責任も果たせるでしょう。
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まとめ
法令遵守の観点から、産業廃棄物の適正な管理は大切な取り組みです。廃棄物管理責任者や特別産業廃棄物管理責任者の役割、適切な処理に必要な書類、産業廃棄物と一般廃棄物の分類など、管理の基本を理解することが求められます。
また、事業者には排出した廃棄物の最終処分までを把握する義務があり、無許可業者への委託や不適切な処理、厳しい罰則の対象となる可能性があります。そのため、産業廃棄物処理業許可証の確認や適正な処理状況の確認は欠かせません。
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