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マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは?罰則や運用の流れについて解説
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マニフェストは、産業廃棄物を委託業者に引き渡す際に作成が義務付けられている伝票です。記載内容に誤りや漏れがあったり、適切に保管されていなかったりすると、管理が不適切とみなされ、罰則の対象となります。
罰則を避けるためには、マニフェスト制度を正しく理解することが重要です。「必須の記載項目は何か」「適切な運用方法」「違反とされる行為」について、事前に確認しておきましょう。
本記事では、マニフェストの適切な管理方法や記載が必要な項目について解説します。さらに、違反が判明した際の罰則についても紹介します。
産業廃棄物のマニフェストとは?
産業廃棄物の処理を業者に委託する際に必要となるのが「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」です。これは、環境省が定める「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」にもとづいて運用されています。
ここでは、マニフェストの概要や制度の仕組み、導入の背景について、廃棄物処理法を参考に詳しく解説します。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
マニフェストとは
マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、産業廃棄物の処理を業者に委託する際に、委託者が発行する伝票です。廃棄物が適切に処理されるように、その流れを記録・管理する役割を担っています。
廃棄物処理法の第12条の3により、産業廃棄物を業者に引き渡す際は、必ずマニフェストを発行しなければならないと定められています。
マニフェスト制度とは
マニフェストを用いて産業廃棄物を管理する仕組みを「マニフェスト制度」といい、日本では1990年に運用が開始されました。排出事業者は、マニフェストの交付後、以下の期間内に処理の完了を確認する義務があります。
- 90日以内:中間処理の完了確認
- 180日以内:最終処分の完了確認(中間処理がない場合は90日以内)
もし、定められた期間内に処分の確認ができない場合は、都道府県や自治体へ報告しなければなりません。また、マニフェストを交付できるのは委託契約を結んだ業者のみです。契約を結ばずにマニフェストを発行することはできないため、注意が必要です。
マニフェスト制度の目的
マニフェスト制度が作られた背景には、かつて産業廃棄物の不法投棄や不適切な処理が多発し、社会問題となっていたことがあります。産業廃棄物の処理には、複数の運搬業者や処理業者が関与しており、ひとつの廃棄物が複数の業者を経由するため、処理の流れを追跡するのが難しく、次のような問題が発生していました。
- 自然環境の破壊
- 衛生環境の悪化や健康被害
- 廃棄物処理中の事故
これらの問題を防ぐため、1993年に特別管理産業廃棄物からマニフェストの使用が義務化され、1998年にはすべての産業廃棄物に対して使用が義務化されました。そのため、すべての関係者が産業廃棄物の流れを記録して管理しなければなりません。
マニフェストを使うことで「どこから廃棄物が出たのか」「どの業者が運び、どこで最終処分されたのか」が明確になり、万が一問題が起きても原因をすぐに特定できるため、不法投棄や不適切な処理の防止につながります。
また、この制度の大きな目的は、不法投棄の防止と、廃棄物の適正処理に対する排出事業者の責任を明確にすることです。排出事業者は廃棄物が正しく処理されるよう、責任を持って管理しなければなりません。
最近では、紙のマニフェストに加えて「電子マニフェスト」が導入され、管理がより簡単かつ正確になりました。電子化によって情報がリアルタイムで共有され、廃棄物の追跡が効率化し、監視体制がさらに強化されています。
マニフェスト作成が不要なケースは?
排出事業者は、産業廃棄物の処理を外部に委託する際、通常は必ずマニフェストを作成しなければなりません。しかし、以下の場合には例外的にマニフェスト作成が免除されます。
- 市町村または都道府県に産業廃棄物の処理を委託する場合
- 廃油処理事業をおこなう港湾管理者または漁港管理者に廃油の処理を委託する場合
- 古紙や鉄くずなど専ら再生利用の目的となる産業廃棄物の処理をおこなう業者に処理を委託する場合
- 再生利用認定制度や広域認定制度により環境大臣の認定を受けた者に、その認定品目にある産業廃棄物の処理を委託する場合
- 再生利用に係る都道府県知事の指定を受けた者に、その指定品目にある産業廃棄物の処理を委託する場合
- 運搬用パイプラインや、これに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の処理をおこなう者に処理を委託する場合
- 産業廃棄物を輸出するため運搬をおこなう者に、わが国から相手国までの運搬を委託する場合
- 海洋汚染防止法の規定により許可を受けて廃油処理事業をおこなう者に、外国船舶から発生した廃油の処理を委託する場合
マニフェスト運用の流れ
マニフェストは委託契約書と連動して移動します。主に以下の5つの流れで進行します。
1.排出事業者
産業廃棄物を委託先に渡す際に「一次マニフェスト」を発行します。
2.収集運搬業者
排出事業者から渡された一次マニフェストをもとに、中間処理業者に産業廃棄物を運びます。
3.中間処理業者
産業廃棄物を処理したあと、最終処分業者に渡すために、新しく「二次マニフェスト」を発行します。
4.再び収集運搬業者
中間処理された産業廃棄物を運び、最終処分業者に届けます。
5.最終処分業者
廃棄物を完全に処理し、報告を行います。
このように、マニフェストには、一次マニフェストと二次マニフェストが存在します。一次マニフェストは排出事業者が発行し、二次マニフェストは中間処理業者が発行します。一次も二次も、マニフェストの書式は同じものです。
ここでは、上記の5つの流れについて詳しく解説します。
収集運搬業者への引き渡し
排出事業者は、産業廃棄物を収集運搬業者に渡す際に、マニフェストに必要な情報を記入します。収集運搬業者は、マニフェスト(A・B1・B2・C2・D・E票)のすべてに、産業廃棄物を受け取った証拠として、運搬担当者の名前や会社名を記入し、署名または押印します。
その後、A票を排出事業者に返却します。排出事業者は、このA票を5年間保管する義務があります。
収集運搬
収集運搬業者は、産業廃棄物を中間処理業者に渡します。中間処理業者は、マニフェストに処分担当者の名前や押印をし、収集運搬業者に控えとして「B1票」と「B2票」の2枚の伝票を渡します。
その後、収集運搬業者は運搬が終わったことを知らせるため、B2票に運搬が完了した日付を記入し、排出事業者に送ります。収集運搬業者はB1票を5年間保管する必要があります。
排出事業者はB2票の記載内容を確認し、問題がなければ受け取った日付を記入して、5年間保管します。
中間処理
中間処理業者は、廃棄物の処理が終わったら、処分終了日をC1票に記入し、これを5年間保管します。その後、「C2票」と「D票」を収集運搬業者や排出事業者に送り、処理が終わったことを知らせます。
収集運搬業者と排出事業者は、受け取ったC2票やD票を5年間保管しなければなりません。
また、排出事業者にはマニフェストの確認義務があります。収集運搬や中間処理が終わった後に、もし「B2票」や「D票」が返ってこなかった場合は、90日以内に処理業者に連絡して状況を確認しなければなりません(特別管理産業廃棄物は60日以内)。
さらに、問題があったときは、環境を守るための対応を行い、その内容を30日以内に都道府県知事に報告する必要があります。
最終処分
中間処理業者は、処理が終わったあとに残った廃棄物を処分してもらうために、新しい7枚つづりのマニフェスト(二次マニフェスト)を作成し、最終処分業者に廃棄物の処理を委託します。
最終処分業者が処理を終えたら、「E票」を中間処理業者に送ります。中間処理業者はE票を受け取ったら必要事項を記入し、排出事業者に返します。排出事業者は、そのE票を5年間保管しなければなりません。
もし、廃棄物を渡してから180日以内にE票が届かなかった場合は、30日以内に都道府県に報告する必要があります。
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マニフェストの必要項目
以下の項目は、必ず記入しなければならないので、漏れのないように注意しましょう。紙マニフェストでも電子マニフェストでも、基本的には各記入欄を埋めれば問題ありませんが、以下の項目については、法律により記載が義務付けられています。
- 交付年月日・交付番号
- 交付を担当した者の氏名
- 排出事業者の氏名または名称、住所、電話番号
- 排出事業場の名称、住所
- 排出する産業廃棄物の種類
- 排出する産業廃棄物の数量
- 産業廃棄物の荷姿(バラ積み・フレコンバッグ入りなど)
- 産業廃棄物の名称
- 有害物質の有無(有害物質が含まれている場合のみ記入)
- 処分方法(粉砕・切断など)
- 中間処理産業廃棄物の有無(中間処理業者が残さ物を処理委託する場合のみ)
- 最終処分を行う場所の住所
- 運搬を委託した収集運搬業者の名称
- 運搬先の事業場の名称及び住所(積み替えまたは保管を行う場合は、その住所も記載)
- 処分を委託した業者の名称
記載に不備があると、廃棄物処理法に基づき罰則が科せられる可能性があります。正確に記入し、記載漏れがないように注意しましょう。
こちらの記事では、マニフェストの記載方法について解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
マニフェストに関する罰則
マニフェストを交付しない、嘘の内容を書く、定期報告しない、または決められた期間マニフェストを保存しない場合、廃棄物処理法第25条第5号に基づき、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります。
ここでは、マニフェストに関する罰則について解説します。
出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」|e-GOV法令検索(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137)
委託基準違反
産業廃棄物を排出する事業者が、産業廃棄物の運搬や処理を外部の業者に委託する場合に守らなければならないルールです。無許可業者に委託しない、書面で契約(産業廃棄物処理委託契約書)を交わすこと、契約内容と処理の実情が異ならないことなどが該当します。
排出事業者に科せられる可能性がある罰則で最も重く、基準に違反すると、委託した側が廃棄物処理法違反となります。委託基準違反をしてしまうと、5年以下の懲役や1,000万円以下の罰金(またはその両方)と重い刑罰が科せられてしまいます。
不交付や虚偽記載
不交付とは、産業廃棄物を処理業者に引き渡す際に、マニフェストを交付しないことです。排出事業者は産業廃棄物を処理業者に引き渡すと同時にマニフェストを交付しなければならないため、不交付の場合、罰則の対象となります。
また、マニフェストに記載すべき事項を漏らした場合も、同様に罰則の対象となる可能性があります。
一方、虚偽記載とは、マニフェストに実情と異なる内容を記載することです。廃棄物の種類や数量、処理業者名を偽るなどが該当します。不交付や虚偽記載をしてしまうと、1年以下の懲役や100万円以下の罰則が適用される可能性があります。
報告義務違反
産業廃棄物を出した事業者は、前年度のマニフェストの交付状況をまとめて都道府県に報告する義務があります。報告をしないと報告義務違反となります。
報告が必要なのは、紙マニフェストを使っている排出事業者です。電子マニフェストの場合は専用システムが自動で報告するので不要です。
報告は年に一度で、前年度の4月1日〜3月31日までの期間の報告を、毎年6月30日までに実施します。報告する内容は、産業廃棄物の種類や排出量、マニフェストの交付枚数などです。期限内に提出がなかった場合は、罰則を受ける可能性があります。
また、事業場ごとに提出しなければならないことも覚えておきましょう。
保存義務違反
産業廃棄物のマニフェストは、法律により5年間の保存が義務付けられています。保存期間の起点は、マニフェストの交付・回付・送付を行った日、または送付を受けた日のいずれかとなります。そのため、関係者は適切な管理を行い、必要な期間、確実に保管することが求められます。
また、マニフェストを紛失した場合、再発行はできません。ただし、紛失前の処理工程を担当した業者が保管しているマニフェストをコピーすれば代用可能です。電子マニフェストの場合は、保管義務はありません。
マニフェストの違反を防ぐために注意すべきポイント
マニフェストの取り扱いには細心の注意が必要です。たとえミスであっても法律違反とされ、罰則が適用される可能性があるため、適切な管理を徹底しなければなりません。トラブルを防ぐためにも、以下の点に注意して正しく取り扱いましょう。
必須項目の記入を徹底する
マニフェストを業者に渡す際は、必須項目の記入を徹底しましょう。マニフェスト制度の目的は、産業廃棄物が適切に処理されたかを確認し、その流れを記録に残すことです。
マニフェストは、必須事項の記入が義務付けられています。正しく記入されていないと、不適切な処理が発生した際に対処が困難になり、責任の所在も不明確になります。その結果、排出事業者自身も責任を追及される可能性があるため、マニフェストの記入漏れには十分注意しましょう。
記入ミスや漏れに気をつける
マニフェストは、廃棄物の種類ごと・運搬する車ごと・運搬先ごとに新たに作成する必要があります。産業廃棄物の量が多いと、その分マニフェストの枚数も増え、記入ミスや記載漏れが発生しやすくなるため、注意が必要です。
とくに数量欄の記入漏れがよく見られます。排出事業者は重量をその場で計測できないことが多いため、処分業者が計測した後で記入する、A票(最初の伝票)に数量を記載しないなどのような誤りが発生しやすいです。
しかし、数量欄は法律上の必須項目であり、交付時に必ず記入しておく必要があります。もし正確な重量がわからない場合は、以下のような記入が認められています。
- 「2t車1台」「フレコンバッグ10袋」などの表記で代用
- その後、処分業者が計測した重量を備考欄に記載する
なお、対応方法は自治体によって異なる場合があります。困ったときは、委託先業者や行政に確認するようにしましょう。
伝票の保管を確実に行う
マニフェストは、産業廃棄物の運搬や処理が進むたびに各業者へ渡り、移動していくのが特徴です。とくに、産業廃棄物の量が多い事業者では、管理が複雑になりがちですが、マニフェストは5年間の保管が法律で義務付けられています。
そのため、保管漏れを防ぐための管理体制を整えることが重要です。
マニフェストの管理が煩雑で負担が大きい場合は、電子マニフェストの導入を検討してみましょう。電子マニフェストには、以下のようなメリットがあります。
- インターネット上で記入でき、事務作業の負担を軽減できる
- 終了報告の期限が近づくとアラートが表示され、確認漏れを防止できる
- 記入ミスが少なくなる
- 廃棄物の処理状況をリアルタイムで確認できる
- 保管が不要
- 産業廃棄物管理票交付等状況報告書が不要
電子マニフェストを活用することで事務作業の負担が軽減され、より正確な管理が可能になります。マニフェストの保管や管理に不安がある場合は、電子化を選択肢のひとつとして検討してみましょう。
イーブライトは電子マニフェストに対応しています。お見積りやご相談、お取引のご検討など、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
マニフェスト(産業廃棄物管理票)は、産業廃棄物を処理業者に委託する際に必要な伝票です。これにより、廃棄物が適切に処理されたかどうかを確認し、その記録を残せます。
排出事業者は、廃棄物が適切に処理されていることを確認し、きちんと管理しなければなりません。違反を避けるためには、マニフェストの必須項目をしっかり記入し、記入漏れやミスを防ぎ、5年間の保管を守ることが重要です。
電子マニフェストを活用すれば、マニフェストの保管や交付実績報告が不要となり、管理が簡単になります。
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